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2020年09月01日の記事は以下のとおりです。

【連載127】良い職人ではなく良い住宅提供者へ

  • 2020/09/01

 高品質な住宅を低価格で提供するために、私たちは規格住宅を選択しました。日本の規格住宅の最初の形の一つは、いわゆる「プレハブ住宅」でありました。登場当初、今から60年以上前のプレハブ住宅は、まさに「安かろう悪かろう」で、そのイメージの名残りが、いまだに規格住宅に対して少なからずあります。

 しかし、現在はプレハブ工法、つまりプレカットされた部材を決められた設計のもとで現場で組み立てる形は一般化し、大手ハウスメーカーの住宅モデルは「規格」で作られています。いわゆる町の大工さんがお客様の注文で作り上げる注文住宅よりも、大手ハウスメーカーの住宅の方が評価されることも少なくありません。ただし、大手ハウスメーカーの住宅がその性能やブランド料を加味しても、高すぎることは否めません。

 いわゆる町の大工さんの家はどうか。これはまさに職人の腕ですから、価格も性能も千差万別です。腕利きの大工が減ったとか、後継者不足で技術継承が難しくなっているとも言われていますし、現在では在来工法でもプレカットの利用や、共同仕入れした部材の仕様は珍しくなくなっています。

 にもかかわらず、職人の中には「規格住宅」を軽視したり「拒否」したりする人も少なくありません。商品を比較研究したこともなく「安かろう悪かろう」と決めてかかっている場合も少なくありませんが、お客様の注文を聞いてそれぞれに合った家を建てることこそが住宅建築のあり方だと考え、おきまりを与える規格住宅はお客様満足につながらないと考えている人もいます。果たしてそうでしょうか。

 「お金がいくらかかってもいいから、自分の思い通りの家を建ててくれ」と言ってくれるお客様は稀です。仮にそういうお客様がいたとして、建築のプロが素人のお客様に言われるがままに建てて、きちんとした家が建つというのはなかなか考えにくいことです。あるいは「お金がいくらかかってもいいから、あなたの思い通りの家を建ててくれ」と言ってもらえる大工は、ごくごく特定の職人に限られます。多くのお客様は、「可能な予算の中でなるべく良いものを」と願いますし、その「良いもの」についても、建築の素人であれば漠然としていて明確ではないものです。規格住宅はそういう人向けに、金額と内容とを明確に示したうえで受注し建築するものです。規格化がされていればいるほど、現場の職人の腕の差が現われにくく、品質の均一性が保たれます。

 腕が良い大工職人の条件はいろいろあるでしょう。しかし、私たちがめざすのは、良い職人ではなく、良い住宅提供者です。そのお客様にとって内容面と価格面で最もふさわしい住宅を提供するためには、規格住宅の精度をさらに上げていくことだと私は考えます。

  

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