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2020年09月の記事は以下のとおりです。

【連載128】共存利益を実現する住宅提供者

  • 2020/09/15

 これまでも何度か書きましたが、商品やサービスを売る側は、少しでも高く売りたいと考えます。一方で、買う側は少しでも安く買いたいと思うものです。このように、供給側の希望価値と、需要側の効用(満足度)が相反することで生ずる経済行為を「相反利益」と言います。現代のような競争社会においては、大半の経済行為が、供給側と需要側の相反利益となっています。成熟社会で、すべての産業が供給過多の中にあるとすれば、それは解決不可能な問題とも言えます。

 これに対して、「共存利益」とは、「互いに最大効用に達する商取引」と言い換えられます。生産者は自分が消費者の立場になったとき、それを満足して購入できるかどうかということが肝心です。もちろん、消費者にも、生産者の立場に立って考える必要があります。そこには「共存する社会をめざす」という前提が必要で、これは大変なことです。しかしながら、そこからしか共存利益をめざすことはできませんし、共存利益がなければ継続的発展はないと私は考えます。

 前回書いた「良い職人ではなく良い住宅提供者へ」も、この共存利益を実現するために必要なことだと思います。

 「良い職人」が理想的な住まいを建てたいと考えることは否定しません。でもそれは、住む人、購入する人にとって理想的でなればなりません。「職人が理想とする家」を押し付けてはいけませんし、理想的ということは、単に建物や間取り、設備が理想的だということではありません。そこに住んで生活が理想的になるということです。いくら理想的な建物、間取りや設備だとしても、そのために価格が高額になり、そのローンの支払いに毎日苦しむことになるのでは、ちっとも理想的ではありません。

 住宅はとても高い買い物です。預金を下ろすのとは違い、ローンを組んでの支払では、大きな金額もあまり実感なく動きます。だから、建築業者中には「500万円余計に出せばもっとよくなります」とか「100万円上乗せでこんなことができます」と簡単にセールスする人もいます。付加価値を付け、最初の見積もり段階よりも高くするのが営業の腕だとする考え方もあります。

 お客様に喜んでもらって、しかも売り上げも大きくなるというのは、歓迎すべきことです。しかし、建物を離れて考えたとき、最初の見積もりに上乗せされる500万円、100万円は、子供の教育資金や、家族のレジャーに回した方が、その家に住む人にとって理想的になる場合があるということを、住宅提供者も考えるべきなのでないかと思います。その営業は相反利益になっていないか、と。

 同様に、値引きなど売り手側の犠牲により買い手の満足を高めるのも、相反利益です。「共存利益」があって初めて、事業の繁栄と継続がある、そう私は考えるのです。

 

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