【連載118】商品価格の「高い/安い」について
- 2020/04/15
新型コロナウィルスの感染拡大やその防止策の影響で、経済界には大きな影響が出ています。中国の工場の操業停止や物流の混乱などにより、私たち住宅建築の業界でも、資材や住設商品の供給が間に合わず、現場によっては大変苦労をしています。
一般生活でも、マスクや消毒液、トイレットペーパー等紙製品の不足状況があります。トイレットペーパーについては、供給不安がデマであることがわかり徐々に店頭にも並ぶようになってきましたが、マスクや消毒液の供給が正常化するのはまだまだ時間がかかりそうです。
マスク不足の原因は生産拠点である中国からの輸入が止まっていることもありますが、大きな原因は買占めだと言えるでしょう。不安感から必要以上に購入してしまう心理は理解できなくもありませんが、転売目的の買占めも横行しました。政府が転売禁止を発令した直前は、ネット上では通常価格の10倍以上のマスクの出品も珍しくありませんでした。
モノの値段は需要と供給で決まります。また価格の高い安いは買い手の必要性や価値観で決まります。どうしても必要であれば通常の10倍の価格であっても買いたいと思いますし、高いとわかっていても買わざる得ないことがあります。しかし、不要であったり興味がなければ、例え通常価格の半値でも安さは感じませんし、10分の1であっても買おうとしません。
必要なものを適正な価格で販売することが健全な経済活動です。しかし今回のようなことは世の中でよく生じます。また、売る側に悪意がなくても、売り手と買い手の感覚の差でミスマッチも生じます。私たちが進める戸建賃貸住宅のビジネスにも同じようなことが言えます。
高度経済成長期は家が不足していましたから、極端に言えば建売住宅は建てさえすれば売れ、賃貸住宅も入居者ですぐ埋まりました。売り手が強ければ値段は高くなります。そのようにして日本の住宅産業や賃貸住宅の市場は推移してきました。ところが今や、家は余る時代に来たのです。高い値段で売れる、貸せるという感覚のままで経営してきた売り手は、苦戦を強いられているのです。
今や、持ち家はもちろん、賃貸であっても、ただ住めればいいという家に買い手は興味を示しません。狭くて音のストレスがあるアパートは必要を感じませんから、賃料がいくら安くても借り手は見つからないのです。一方で、借り手は市場に格安物件が多数存在することを知っていますから、多少商品が良いと感じても高ければ借りません。賃貸住宅においては借り手の必要性や興味によってじっくりと選ぶことができるようになりました。嫌ならばすぐに住み変えられるようになったのです。賃貸住宅の供給側は、こうした状況を十分に理解して対応する必要があります。
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