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【連載137】子育て世代の住まいの目的

  • 2021/02/01

 前回、「人が主役で住まいはそのサポートをする」という本来の姿の実現が、私たち住宅供給者にこれから求められてくると書きました。このことは、私たちが住宅商品の開発や販売において、常に基本に考えていかねばならないことだと思います。

人が住むということに関して、基本的に何がまず必要になるのか。

生を受けた最初の住まいというのは親の家です。親元で親が与えられた住まいで生活をするのがふつうの人生のスタートです。そして一般的なストーリーとしては、進学や就職でその親元を離れ部屋を借りて一人で暮らします。そして、男性であれば、彼女ができて結婚しようかということなり、一人で住んでいるワンルームに彼女を入れると狭いからと家を買ったり建てる人もいれば、新しい賃貸住宅に引っ越しをする人もいます。住み替えということが起きます。

 結婚して家族が1人から2人に、そして子供が出来て3人になると、そこから今度は子育てが始まります。生活の主目的が子育てになります。当然、住まいに求める主目的も子育てになるわけです。世の中の変化や価値観の多様化により、生涯独身という人も少なくありませんし、子を持たない夫婦も増えていますが、ここでは統計的にまだまだ多い世帯パターンを例にします。

 子供を育てるのが目的の子育て世代は、学校や幼稚園といった教育施設が何よりも必要です。また子供の具合が悪くなったときのための小児科、医療施設も重要です。親としてはそれが最大の目的なので、コンビニとかスーパーは、ちょっと離れててもいいかな、最優先に大事なのは子供のための施設だということになります。

 子供が小学校に入学する年齢になれば、小学校に近い場所でなければなりません。学校の通学範囲はだいたい1キロ以内です。小学校の1キロ以内に居を構えるとなると、そういう場所の家を買うか借りるかという選択になります。子供の学校のためであれば、通勤の不便さは多少我慢することになります。広くて安い住宅でも、学校がなければファミリー層は入居しません。

 義務教育は小学校と中学校とで9年間ですが、親の子育ての義務は、その後の高校3年間、大学の4年間も含めて考える人が大半です。その12~16年間で一応子育ての目的が達成します。子は、自分たちと同じように独立していきます。

 そうなると、学校のそばに居を構える必要はなくなります。子供の通学に便利だった小学校も、無関係になれば子供の声がうるさく感じます。目的が変わったのですから当然です。次の目的にあった住まいへの住み替えが必要ですが、ここでネックになるのが、賃貸でなく持ち家の場合、買い替えがとても困難だということです。多くの人が住宅ローンを抱え、簡単に買い替えできないからです。これが現代の日本の住宅事情の最大の問題点だと私は考えます。

 

 

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