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2021年02月15日の記事は以下のとおりです。

【連載138】子育て解放後の住まいの目的

  • 2021/02/15

 子育ての義務から解放された人は、人生の主目的が次に移ります。社会的に重責を担う働き盛りの時期の壮年期です。結婚や出産の時期により年齢的には様々ですが、30代の後半から40代半ばといったところが多いでしょう。内閣府では35〜44歳を壮年期としているようですし、市区町村では40〜64歳までとしているところもあるようです。

 働き盛りであれば通勤の便を優先したいところです。子供にお金がかからなくなった分、買い物を楽しみたいと商業施設に近い方がいいと考える人もいるでしょう。独身時代に重要視し、子育て時代に我慢していたことを元に戻そうと考えたり、年齢相応に求めたりもします。また人生経験を経て得た価値観での目的が生まれ、それを達成するための住まいへの住み替えを求めるようになります。

 ところが現代の日本では、それがなかなかできません。子育てのために買った住宅のローンが足かせになっているのです。30歳で35年ローンを組めば、65歳までそれを返済し続けなければならず、借り入れから10年程度の返済では借金の額はそれほど減っていません。にもかかわらず、中古となった住宅では、売ってもローンを完済することができないのです。

 壮年期の次に迎えるのが老年期。私は熟年期と呼んでいます。子育ての責任を終え、仕事の場で社会的役割を果たした後に60歳を過ぎて定年を迎え、さらには再雇用等での仕事も終えれば、今度は社会的責任からも一定解放されます。そんな70代、80代が熟年世代です。

 様々な重圧から解放される熟年世代ですが、今度は年齢による身体的な不具合が生じる人が増えます。足が不自由だとか、健康があまり芳しくないとか。そんな熟年世代が一番欲しいのは、病院などの医療施設。そして、そこに向かう交通施設、交通手段です。運転免許を返上していれば、公共交通機関やデリバリーサービス、医療においては訪問医がいることが必須になります。

 人生を子育て、壮年、熟年で分けた時、私たち住宅産業はその目的に応じた住まいを供給していくべきです。建てる家の立地環境を変え、周辺に必要な施設を整えていくということは、中小規模の事業者単独では難しいことです。もちろん、産業としてそれもやっていくべきでしょう。ですが、住宅産業としてまず取り組むべきなのは、住み替えが容易となる構造への転換です。

 そのためには良質な賃貸住宅を供給することも必要ですし、住宅ローンの縛りを緩和させる取り組みも、私たち住宅産業がやらねばならないことだと私は考えます。

 

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