施工店 販売店インタビュー 015

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2016台風10号被害震災以上
復旧復興職人確保大変 

 2016年8月の台風10号は、気象庁観測史上初めて、東北地方太平洋側に上陸し、同地に甚大な被害を与えました。浸水被害等を受けた久慈市の北斗土地開発・谷地社長を訪ねてお話を伺いました。

糸田氏

有限会社 北斗土地開発
代表取締役 谷地力夫 氏

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有限会社 北斗土地開発
 地元出身で、東京に進学・就職していた谷地社長がUターンし、1982年(昭和57年)に設立。久慈市を拠点に、宅地開発や不動産仲介を行う。



本社/岩手県久慈市新中の橋4-22-2
電話/0194-52-3121
http://www.hokutorp.com


◀上:社屋 下:社内

同社の施工実績 ※写真をクリックで拡大


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  台風10号の復旧復興を進める

ーー台風10号の久慈周辺の被害は東日本大震災以上と伺いました。

谷地 長年ここに住んでいますが、こんな雨や水害は初めての経験です。震災ではこのあたり北三陸も大きく揺れましたし、津波もありました。でも、南三陸ほどではありませんでした。ところが、台風10号の雨と浸水はすごかった。幹線道は川のようになり、今まで経験したことがないものでした。台風上陸の翌日は、市街地にある私の家から、久慈川を渡ったところにある会社まで、橋を渡ることができない。ずっと上流を迂回してたどり着きました。幸い事務所は無事でしたが、市街地の商店街はどこも水浸しです。ちょうど、洋館家の商品を建てていたところでしたが、場所と盛土がよかったのか、間一髪で浸水を免れました。購入予定だったお客様も後から見て「ついている」と言っていましたが。
 水に浸かった建物は、乾いても壁や柱の臭いでわかります。住宅や商店は、ひとたび浸水被害に遭うと臭いの処理が大変です。傷んだ建物を修復したり、建て替えたりする必要がありますが、台風から半年経ってもなかなか進みません。それというのも、復旧復興のための建設作業員や職人が皆、南三陸や福島の震災復興に取られてしまっているからです。



   東北地方を襲った2016年の台風被害  topics

 2016年8月に発生した台風10号は、日本の南で複雑な動きをした後、大型で非常に強い台風に発達して北上した。8月30日18時前に岩手県大船渡市付近に上陸。東北地方の太平洋側に台風が上陸したのは、1951年(昭和26年)に気象庁が統計を取り始めて以来初めて。
 1時間雨量は、久慈市の南の岩泉町で70.5ミリ(30日18時21分まで)で、統計開始以来の極致を観測。この岩泉町を中心に岩手県内で20人の死亡が確認され、3人が行方不明となった。また、岩手県岩泉町で高齢者施設の近くを流れる小本川が氾濫し、施設内に水が流れ込んだため、入居者の男女9人の死亡が8月31日確認されたことも大きく報じられた。久慈市では久慈川と長内川が氾濫し、二つの川に挟まれた広範囲が浸水した。
 また、翌週9月4日にも大型の台風12号が接近。岩泉町は9月4日の台風接近に備え、町内の全4,587世帯、9,947人に避難指示を出した。久慈市でも、山間部の1,279世帯、3,008人に避難準備情報を出し、両市町は孤立集落の住民計800人をヘリなどで緊急避難させている。
 久慈市当局が、道路の全面復旧と全ての集落で孤立が解消されたと明らかにしたのは、台風10号上陸から2週間経った9月13日のことである。

  ローコスト住宅を求めて洋館家にたどりつく

ーー社長は地元のご出身で、ご自身で創業されたのですね。

谷地 高校卒業後、進学で東京に出て、卒業後は商社に入りました。輸出専門で10年ほど勤めましたが、円高でどんどん業績が悪くなっていきました。「このままだと危ないな」と考え、妻もこちらの出身なので、昭和55年にまずは地元に戻りました。兄が工務店をしていましたので、そこでアルバイトのようなことをしたのですが、社員扱いにしてもらっても地元の相場の給料は東京の半分ぐらいでした。「これはいかん」と、独立するために宅建の資格を取る勉強を始めました。経験もお金もないのに不動産業を始めるというのは、今から思えば大変な冒険でした。

--住宅販売を始めるのはいつ頃から?

谷地 最初の10年は仲介専門でした。オイルショックの後でバブルに向かっている比較的いい時期だったのでしょう、事業もわりとうまくいきました。もっとも、貯まるほどは儲かりませんでしたが(笑)。会社の実績ができてくると、銀行が土地を買う金を貸してくれるようになりました。そこで、買った土地をそのまま担保にして切り刻んで土地の分譲などをしました。建物は兄の会社が建てますから、紹介手数料をもらいます。
 このようなことをやっているうちに、業界誌の記事でコンサルタントが勧める規格住宅の販売を知りました。営業指導などもしてくれるところで、加盟料を払っていろいろ勉強しましたが、いまひとつしっくりこないでいました。そのような中で、同じコンサルタントが、今度は洋館家さんを紹介していたので、早速、鹿沼に行って福田社長に会って施工店の登録をしたわけです。今から4年前です。

--洋館家を選んだ理由は?

谷地 洋館家は戸建賃貸住宅を宣伝していますが、それをわが家として買う人も多い。「これがいい。安いから」と。しかも、価格が一定。実際、ここ3年くらい価格維持してくれていますが、こういうところがお客様に勧めやすいところです。3年間で10棟以上やりましたが、ほとんどは建売です。このあたりの人の多くは、所得が低い。そういう人たちの持ち家の夢を叶えるのが、洋館家の商品の建売なんです。

--戸建賃貸はやらないのですか。

谷地 もちろん、土地を持っている人には戸建賃貸も勧めています。今までに6棟ほどやりました。賃貸需要はあります。ただ、こちらの方は競合もありますから大変です。
 借家に入っている人は住宅購入の見込み客ですが、管理業はクレームで振り回されます。大家さんも要求が多い人が増えている。どうしてこんなふうになったのかというと、みんな我々不動産業界がそうしてしまったのですね。アパートを建ててほしいから大家さんにいいことばかり言う。空室を埋めたいから、入居者にもいいことばかり言う。こういう状態は、変えていかないといけませんね。


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  人の確保と工賃の問題を解決したい

--復興需要で職人確保ができないという話はよく聞きます。

谷地 いまだに震災復興事業が続いていますから、それに人を取られちゃう。オリンピック需要もありますから、そこにも人を取られちゃう。マンションだホテルだと、大工さんや職人さんを東京に取られてしまっています。この辺は昔から出稼ぎの供給地みたいな所ですからね。こちらは、岩手県内の一戸市、二戸市あたりから人を呼んでいます。まだ、あのへんは景気が良くないようで人はつかまりますが、先はわかりません。

--人の確保以外での悩みはありますか?

谷地 人の問題の延長ですが、やはり工賃の部分ですね。洋館家の商品の資材は確かに安い。しかし、本部が提示する実行予算での職人の工賃などは、当社ではとても無理な金額の時もある。本部ができるのは、発注数のこともあるでしょうけれど、それでやれる職人を抱えているのでしょう。でも当社はできないし、人が足りなくなれば、ますます工賃は上がるでしょう。このあたりをどうやって解決していくか、本部と一緒に考えたいですね。



  地域に密着した営業と地元貢献

--営業活動はどのようなことをされていますか?

谷地 当社は、賃貸を建てる人も借りる人も、土地を売る人も家を建てる人も、すべてこの地域の方々をターゲットにしています。営業や広告宣伝は社内の印刷機でやったり、インターネットのホームページでやったりと工夫しています。洋館家商品は価格が一定ですから、いつまでも同じパンフレットでお客さんに紹介できて便利ですね。もちろん、このへんは寒冷地ですから、寒冷地仕様のオプションは説明します。
 冬場は凍結など、賃貸入居者のクレーム対応に追われて、なかなか他の営業活動ができず大変です。営業活動は、やはり地元の皆さんとのコミュニケーションづくりが大事ですね。私は歴史の本を読むのが好きなんですが、歴史の話は会話がはずみます。歴史と言っても、家康や信長ではなく地元の歴史です。地元のお客様や見込み客の皆さんは、地元の歴史について何がしかの知識がありますからね。
 歳を取ったせいか、商工会議所や法人会とか、地元のいろいろな役をやらされるようになっています。このあたりも人口は減っていますが、少子化や結婚しない若い人の問題などは、社会全体で解決策を考えねばなりません。地域のために、できることはやっていきたいと思っています。



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