施工店インタビュー 013
自社の営業力を
補ってくれる
洋館家のグループ力が
魅力
有限会社 幸和工務店
代表取締役 渡辺 正明 氏
群馬県渋川市で古くからの大工の家に生まれ育った渡辺正明社長は、12年前に起業。2010年に洋館家の施工店登録を行い、公私の苦難を乗り越えて、現在、施工実績を着実に積み上げています。
有限会社 幸和工務店
地元の工務店経営者の子息であった渡辺社長が2004年に設立。社名は「丸く穏やかにすると平和になれる」という意から。洋館家商品の施工と、注文住宅や修繕を中心に事業を行っている。
本社/群馬県渋川市行幸田198-3
電話/0279‐25‐3985
http://www.kouwa-koumuten.com
廃業、就職、そして起業
ーーいまの会社は渡辺社長が創業者ですね?
渡辺 2004年に私が設立しました。もともと私の家は祖父の代から大工をやっていました。新潟から出てきた祖父がここ渋川で大工に弟子入り、その棟梁に跡取りがいなかったため、引き継いだと聞いています。父が後を継いで渡辺工業として法人化し、一時は人もたくさん使っていました。
私は学校の先生になりたかったのですが、父の命で兄と共に家業を継ぐことになり、大学の建築科を卒業して県内の地場ゼネコンに入社しました。足掛け3年勤めて家に戻り、15年間ほど父や兄と渡辺工業の経営に関わりました。営業も現場もやりましたが、景気も悪くなり、経営はだんだん厳しくなってきました。
そのような中で、私の家内が30代で病気で亡くなるなど不幸も生じ、父も経営意欲がなくなり渡辺工業を畳もうということになりました。破産する前に整理しようと考えたわけです。
ーーそれで社長が独立されたわけですか?
渡辺 いえ、私は勤めに出ました。知り合いだった前橋の住宅会社に入ったんです。でも、40歳で転職して人に使われて、しかも給料も下がりましたから、なんだかつまらなく感じて、すぐにやめて1人で建築の仕事をやろうと思いました。
営業面を考えてあるフランチャイズに加盟しましたが、加盟の条件が法人でなければならないということなので会社を作ったわけです。そこは東北に本社がある、輸入部材や低価格な材料を使った住宅を提供している会社で、なかなかセンスのいい家を作ります。いろいろ勉強になりましたが、毎月のフランチャイズ料が結構かかり、それに見合った仕事がなかなかとれなかったものですから、2年ほどでやめました。1人なので営業活動もそうできません。知り合いの伝手を頼って新築や修繕の仕事をもらいました。
ある時、親友の弟の家の新築を請け負いました。大金持ちというわけではありませんが、家にはしっかりお金をかけようと考えてくれる人で、大きくて立派な仕様の家を建てました。すべて任せてくれましたから、本当にいい仕事ができました。でも、そのような仕事はめったにありません。また、このあたりの人は親戚や特別な伝手がない限り、地元業者であっても小さな無名な工務店にはあまり頼まないようです。テレビコマーシャルをやっているような大きなところを選びます。それはアパート経営でも同じで、「宣伝している会社だからいいだろうと思って契約して失敗した」と言う人もいます。でも大手は強い。そのような中で営業するのはとても大変です。
「1人営業」ではできない受注件数
ーー洋館家との出会いは?
渡辺 営業で苦戦していた頃、知り合いの不動産屋さんから紹介されました。戸建賃貸を作るということよりも、毎月のフランチャイズ料が必要ないというところがまず魅力でした。そして、グループに入れば本部や地元の不動産屋さんから来る注文を受けて、どんどん家を建てるだけでいいというふうに都合よく理解しました(笑)。本当はそういうことではないのでしょうが、それと、手数料は仕事が来た時に数%払えばいいと聞いて、これはいいな、と思いました。でも最初の頃は、自分で何もしませんから、ちっとも仕事が来なかった。2~3年経って本部の方針を理解してきた頃からちょこちょこ来始めました。今はコンスタントに来ています。私1人が営業していたのでは、とてもこのようなペースでは仕事は来ないでしょう。
--現在の課題は?
渡辺 売る値段が決まっていますから、どうやって利益を確保するかです。正直、今のしくみでは利益はそれほど取れませんし、職人の手間もギリギリです。数をとって仕事をたくさん出すことができれば、多少、職人に無理を言うこともできますが、現状のペースでは難しい。受けた仕事でお客様にオプションを提案する方法もあるのかもしれませんが、お客様はあらかじめ決めた値段で作って欲しいでしょうから、それもなかなか難しい。やはり、自分のルートも含めて、扱う戸数を増やすしかありませんね。私ももっと営業しなければいけないのでしょう。
教師の夢をかなえ後進指導も topics
ーー地域や建築関係でさまざまな活動をされていますね?
渡辺 消防団や建築士会の仕事をいろいろやってきました。今も続けているものもあります。子供が小さい頃に妻が亡くなりましたから、子育てでは苦労しました。そんなこともあってPTAの役員をやり、結果として県の連合会の理事や、その後、大学の後援会の役員もやるようになっています。
もともと教師になりたかったのに建築の道に進んだわけですが、今、前橋の専門学校で非常勤講師をしています。現場監督の授業でテキストに書いてあることを説明し、現場のことを私の経験を踏まえて若い人たちに教えています。授業を受けている生徒は、設計士のタマゴや建築会社に就職を希望し、将来は現場監督になっていく子たち。職人になる子たちは高等職業訓練校に行きますが、そちらでも教えています。住宅や建築産業はこれまでのように国内経済を引っ張っていく花形産業ではなくなるかもしれませんが、だからといって急にしぼむ業界ではない。若い人には、しっかり勉強して、次の時代をつくっていってほしいと思っています。
私自身は50歳を過ぎましたが、今、京都造芸大学大学院建築デザインの二回生です。一級建築士資格を持っているものの、どうもセンスが悪いのでデザインの能力は低いと感じていましたから、再び学士入学で勉強を始めたのです。月に1度のスクーリングがあって、設計したものを持って行って添削を受けます。うちに帰ってそれを直して今度はネットで送るという形で勉強しています。
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高価格住宅のメニューも欲しい
--洋館家本部への要望やご意見は?
渡辺 低コストで高品質の住宅という洋館家さんの考え方はすばらしいと思います。価格面ではもっともっと競争力をつけていってほしいと思っています。ただ、「低価格=魅力のない家」と思われてしまいますし、高い住宅を作る能力がないように受け止められかねません。ですから、商品ラインナップには、1,500万円以上の高価格商品をもう少し並べていただければと思います。実際にそれが売れるかどうかは別として、低価格から高価格まで、良い住宅を作っていることがわかるようなカタログがあるといいなと考えています。
高い家賃が取れない地域で差別化できる商品に
--戸建賃貸への取り組みは?
渡辺 正直、当社からの営業はまだまだですね。ただ、私自身も賃貸アパートを経営していますから、戸建賃貸の今後にはとても関心があります。40数年前、私がまだ子供の頃に父がアパートを建てたのが最初です。工業団地ができて大手企業は自社で社宅を作りましたが、それだけでは足りないという時代がありました。父は自分だけでなく、地元の土地を持った人たちにも提案して、この地域に随分アパートを建てました。同じ頃から、大手が進出してきたり、農協がやはり大手ハウスメーカーと組んだりして多くのアパートが建てられましたが、最近は空室が増えているようです。
私が現在所有しているのは2棟で、2LDKが27戸あります。入居者は大手企業の転勤族が多いようです。北関東でも宇都宮、前橋、高崎であればそれなりの家賃が取れるでしょうけれど、渋川ではこのクラスでは5万円台。10年前に父が建てようかと言った時は反対しましたが、お陰様でうまく稼働しています。もちろん、借金はまだ残っていますが。
賃貸経営はこれからますます厳しくなることはわかっていますから、差別化も必要でしょう。高い家賃が取れない地域で差別化できる商品ということで、洋館家の戸建賃貸を宣伝できればと思っています。