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連載85 大手ハウスメーカーと差別化

 今年、シェアハウス「かぼちゃの馬車」の破綻事件で、サブリース融資に最も積極的だったスルガ銀行の不正融資が発覚しました。担保物件の評価額を改ざんした二重の売買契約書、入居率や家賃収入の偽装、家主の年収や預貯金額の水増しなど、不正は広範囲に及び、同行の不動産融資総額の半分が不正融資とみられるなど、ひどいものでした。
 この事件だけでなく、金融機関によるいわゆる「アパート融資」については、以前からいろいろ問題が指摘されていました。金を貸したい金融機関と、建物を建てさせるだけで儲けようという一部のハウスメーカーによって、無理な賃貸住宅投資を行わされることになったオーナーは少なくありません。
 こうしたことを受け、金融庁など行政当局の指導や金融機関自身の自粛ムードにより、個人の賃貸住宅建築への融資額は今年になって大幅に減っています。これは私たちにとっても“逆風”だと言えます。
 しかし、無理な投資とそのための過剰融資がなくなることは、賃貸住宅市場の健全化のためには良いことだと言えるでしょう。テレビCMをたくさん流している集合賃貸住宅主体の大手ハウスメーカーの営業手法がいかに問題であるかは、私たちの業界にいる者であれば皆知っています。しかしそれでも、いまだにその会社のセールスマンを信じ、後に「騙された」と後悔するオーナーが少なくありません。
 集合タイプに比べてメリットが多い戸建賃貸住宅を自信を持って販売している私たちですが、「戸建なら絶対に大丈夫」とは決して言いません。ニーズが高く供給が少ない、広くて快適な新築の戸建賃貸は、多くの場合、建てればすぐに入居者が決まり、さらに長期間の入居が期待できるので空室リスクは少なく済みます。しかも、アパート・マンションなどに比べれば投資コストも低い。けれども、賃貸住宅である以上、やはり立地の問題が大切であることは言うまでもありません。
 就労場所との距離や交通機関、公共施設や生活インフラがなどの状況を精査し、ファミリー層がリタイアしたシニア層かなど入居ターゲットのニーズと合わせ、建てるべきか否かをオーナーとともに検討します。大手ハウスメーカーは、そこに賃貸住宅が建てられるかどうかしか考えません。私たちは、そこに借家人がいるか、いるとすればどんな借家人かを考えた上で提案します。
 本部では戸建賃貸住宅を建築する場所について、ABCの評価ランクを付け、Cについては原則お断りしています。私たちが信念を持って建築する高品質低価格の住宅を、空き家のままにするつもりはないからです。


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