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社会の変化と賃貸住宅④

【連載08】格差社会の到来

 バブル崩壊後の経済は、生産しても価格の高い商品については大多数の消費者が購入できないという「現象」、つまり格差社会が到来したのです。アメリカはすでに1%の富裕層が全体を支配していると言われていますが、日本においてもこうした格差は顕著になってきております。一例として、4,000万円以上の貯蓄を持つ世帯は全体の10%ですが、その層が総貯蓄の40%を保有しているというデータがあります。
 また、この20年間で国民生活は加速度的に厳しさを増してきており、消費者物価指数は1991年と2014年がほぼ同等ですが、一世帯当たりの平均所得は1994年に664.2万円であったのに対し、2011年は537.2万円と17年間で127万円も減少してしまったのです。そして、2012年の平均所得は537.2万円で、しかも60.8%の世帯はその平均を下回っているのです。このような状況下で「消費税」や「相続税」の増税が行われました。
 一方では人口減少と少子高齢化が急速に進み、生産人口(勤労者)が減って格差が広がるという構図が出来上がりつつあり、それを前提とした新しい仕組みづくりが求められています。
 私達の住宅産業も、まさにこうした視点から取り組む必要があります。若い勤労者に住宅ローンを勧めてマイホームを買ってもらうという単一的なビジネスは、「量から質の時代」に移行した現在、多様化するニーズに的確に応えているとは言えなくなってきております。マイホーム取得という選択から一戸建て賃貸住宅という選択肢も格段に増えており、多様化するニーズは決して一元化で処理はできません。「マイホーム取得までの賃貸暮らし」から「賃貸住宅に一生住む」という消費者ニーズに対応し、積極的に取り組む必要性が生じてきていると私は考えます。