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連載73 住宅ローンは高度経済成長期のモデル

 高品質で低価格の住宅を追求する私たち洋館家本店の主力は「戸建賃貸」です。賃貸住宅を建てるオーナー側は、投資の回収を考えますから、建設コストは可能な限り下げたいと考えます。ですから、なるべく低価格の住宅を提供することは大切なことです。しかし、低価格ならば品質が悪くてもいいのか、というとそうではありません。
 確かに、高度経済成長下の日本では、とにかく家は建てさえすれば売れ、借り手も見つかりました。でも、いまはそうではありません。社会が豊かになり、住宅にも品質が求められるようになりました。このことは、賃貸住宅においても同様です。
 かつては、地方から東京に出てきた若者が寮や風呂なしアパートに住み、結婚しアパートを移り、子供ができて少し広めのアパートやマンション、一戸建ての借家に移り、そして住宅ローンを組んで一戸建てやマンションを買う、という「住宅すごろく」を多くの人が選択しました。借家は借りの住まいで、家を買うために金を貯めなければならい。だから安普請でも家賃が安ければいいし、持ち家ではないのだから我慢して当然、という考えが大半でした。
 今日、こうした従来型の考え方は根本的に見直されるべき時にきています。
 住宅ローンを組んで持ち家を買った人々は、いまどうしているのか。多くは、子供たちが巣立って、歳をとった夫婦2人か、独り暮らしとなって部屋をもて余しています。それなら、その家を処分してコンパクトな家に住み替えればいいかというと、そうもいきません。生涯所得の大半を費やして買った家ですが、ローンの支払いを終えたら、その建物の価値はほとんどありませんから、住み替えの資金に回らないのです。
 住宅ローンというのは、高度成長期のモデルです。物価が値上がりし借金残高が相対的に減額され、しかも、今日より明日、確実に給料が上がるという時代であれば成立します。しかし現代はそうではありませんし、これからもそういう時代は戻ってきません。
 若い夫婦がローンを組んで住宅を買う。でも、人生にはいろいろありますから離婚しようということになった。ところが、2人で買った住宅を処分してもローンを完済できず多額の借金が残る。2人も住む家がなくなり借金を背負うことになるから、離婚したくても離婚できないという悲喜劇が、実際にあちこちで起きています。もう住宅ローンという制度は破綻したと言っても過言ではないのです。