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「借りるマイホーム」を実現する

【連載68】 「借りるマイホーム」を実現する

 高い買い物をしても、買ったモノが「資産」にならないことが明らかであるときは、得られる「利用」の対価に対して払うお金が適正か、という判断が必要になります。この観点からは、現在の日本では、住宅ローンのしくみは破綻したと考えるべきでしょう。高い買い物を、高い金利を上乗せして払い続けても、建物はもちろん土地も、買った時よりもマイナスの査定となってしまうとなれば、「住宅は無理してわざわざ買わなくてもいい」という人が増えるのは当然の流れです。賃貸住宅の需要は、どんどん増えると考えられます。
 もちろん、賃貸住宅の需要が増えると言っても、かつてのような高度成長期とは違います。ただ賃貸住宅を建てれば入居者が入るという時代ではありません。既に全国の賃貸住宅の平均の空室率は20%前後、地域によっては3割が空室になっています。人口減少がはじまり、まもなく世帯数の減少も確実視されている中で、住宅の必要絶対数は減っていきます。賃貸住宅においても、求められるのは良質な住宅です。
 こうした流れの中で賃貸住宅は、これまでは投資効率がいいという理由で集合住宅ばかり供給されていましたが、「居住環境」において「良質」を求める層のニーズに応えた戸建賃貸住宅の需要はさらに高まっていくでしょう。
 また、格差社会が進行しますから、さまざまなモノやサービスも高価格と低価格とに二極化します。住宅の場合、高級志向の層が求める高級マンションや高価格の注文住宅はどんどんそのグレードを上げていくでしょうが、住宅購入が今のように「高い買い物」であるままでは、住宅を「買えない」層が全体として増えます。住宅産業はこの点を解決していかなければ、今後多くの住宅関連業者は事業継続できなくなります。買ってくれる人がいなくなるのですから。
 だからこそ、私たち住宅関連業者が、住まいに対する日本人のイメージを変えなければならないのです。「住宅は高い金は払わない。買わなくてもいい。『借りるマイーム』で十分である」ということを理解・納得できる良質な住宅商品を提供していかなければならないのです。「良質」は、住宅の品質だけでなく、居住環境も含まれます。良い居住環境の条件の一つは「戸建」です。
 投資目的で賃貸住宅を建てる貸し手のニーズを満たし、「マイホーム」として住む借り手のニーズも満たす高品質低価格住宅の供給こそが、格差社会が進行しても住宅関連業者が生き残るために必要なことなのです。格差社会は富裕層だけが富を独占する社会ですが、賃貸住宅で投資を行おうとする富裕層も、それを借りて住む層にも、そして建築・販売する住宅関連業者も、ともに利益を享受し合える共存社会をめざすことが必要なのです。