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住宅ローンのしくみは破綻した

【連載67】 住宅ローンのしくみは破綻した

「需要があるのに供給が足りない。だから戸建賃貸住宅経営は成功するのです」と、私たちは地主さんを説得しています。これは事実です。賃貸住宅はアパート・マンションといった集合・連棟型ばかりが供給され、子育て世代などが求めている賃貸専用の戸建住宅はほとんど供給されていません。もちろん、いわゆる昔ながらの「借家」という戸建住宅はあります。しかしその多くは、一般に建てられている住宅に比べて実に品質が劣る、安普請な建物なのです。
 賃貸住宅は投資回収を考え、建設コストはできるだけ下げたい。しかし、空室が増加する賃貸用のアパート・マンションでは、分譲タイプと同等の品質、同等に見える設備を揃えなければ入居者獲得は難しくなっています。にもかかわらず、一戸建の借家についてはそのことを考慮した住宅建設はほとんどされていません。私たち洋館家グループの商品が、市場で評価を受けているのはここに着眼しているからです。
「借家なのだから安普請でもいい」というのは、多くの人はいずれ家を買う、借家はそれまでの「仮住まい」であるという考え方があるからです。さらには「家を買えない貧乏人だから住まいの品質や設備に文句を言わない」と考えている家主さんもいるようです。それらは、古い時代の思い込みだと言わざるを得ません。
 経済の低迷が長く続いた日本は、アベノミクスなどその後のさまざまな経済政策も相まって、どんどん「格差社会」となっています。つまり「家を買えない人」は増え続けています。けれども同時に「家を買って貧乏になるのはつまらない」と考える人も増えているということです。
「年々所得が上がり、インフレで借金は相対的に目減りし、土地は買った時より常に高く売れる」という高度成長期をモデルとした住宅ローンのしくみは完全に破綻したと言っていいでしょう。「住宅購入のためにローンを組んでも、払い終わった時に家も土地も買った時よりも安くなっている。ローンを途中で払えなくなって家と土地を売っても借金だけが残る」現在、住宅ローンを組んで家を買うことは、わざわざ「貧乏人になる」ことだと判断する人が増えても当然です。
「わざわざ買わなくても、いい家を借りて住めばいい」というニーズは確実に増えています。集合住宅=マンションはこの流れの中で、分譲同等の賃貸タイプが供給され、高級・高品質マンションを投資用に賃貸用として購入する例が増えています。戸建においてもこの流れは当然生じていいはずですが、賃貸用の高品質な戸建住宅はなかなか市場に出てこないのです。