【連載66】 取り残されていた日本の「戸建住宅」
前回、私たち洋館家グループの「日本的な『住宅』に対する考え方を変える」ことを目標にした取り組みについて述べました。これまでも何度か書きましたが、これは日本の住宅産業のあり方を変えることにもつながります。
所有するための購入・建築される一般的な注文住宅と貸すための賃貸住宅との違いは、多くの場合、住宅の性能や設備の差にあります。購入者のこだわりを実現したい注文住宅は当然割高となり、投資を目的にした賃貸住宅はまず建設コストを安くしたい。その結果が、注文住宅に不必要に高額な設備が導入されたり、賃貸住宅が住み心地を無視した安普請になったりするわけです。
かつて、所有を目的とした住宅であっても安普請が量産された時代もありました。高度経済成長の時代です。地方出身の若者にとって、「働いて家を持つ」ことは共通する一つの目標でした。高度経済成長の時代は、年々賃金が上がりました。一方で、年々物価も上がりインフレが続きますから、借金をしても将来の負担は楽だと予想されました。それを背景に住宅ローンが大いに活用されます。家はともかく、一緒に買う土地は確実に値上がりするという土地神話もありましたから、土地が借金の担保になったわけです。とにかく早く家を持ちたいという人が多かったので、上物は安くていい。そのようなことから、安普請の家も大量に供給されました。安普請のアパートあるいは戸建借家や二軒長屋などで待機していた人が、自前の安普請住宅を購入するといった構図です。
しかし高度成長が終焉し、世の中が一定の豊かさを共有するようになると、安普請の住宅は売れなくなります。また、所有する住宅も一戸建てだけでなく分譲マンションが大量に供給される時代となりました。人々は価格だけでなく、品質やデザイン、設備などを比較して住宅を購入するようになったのです。その後、低成長時代とバブル経済、その後の景気低迷期と経ますが、この流れは基本的に変わらず推移します。
近年は賃貸マンションにおいても、分譲住宅並みの品質や設備が求められるようになってきました。分譲で標準化したものは、数年も経ずに賃貸で採用されることが当たり前となっています。
ところが、戸建住宅についてはマンションに比べてその流れが鈍くなっています。もちろん、大手ハウスメーカーの住宅商品はどんどん高品質化、高級化していますが、いわゆる建売住宅ではいまだに安かろう悪かろうの建物が建てられています。ましてや賃貸用の戸建住宅では、果たして「品質」という概念があるのだろうかという家が大半です。日本の戸建住宅、ことに賃貸用の戸建は、時代の流れに