【連載57】住宅を買いやすいしくみをつくる
家賃を払い続け、ある一定の額になったらそれをその住宅購入代金に充当する、というしくみがあったら便利ではないか、そんな提案を前回書きました。あらかじめ期間を定め、賃借人がその期間家賃を払い続ければ、その住宅を購入する権利を与え、払っていた家賃を購入代金の一部に充当するというアイデアです。その条件で入居した賃借人が、何らかの事情で家賃が払えなくなったり、その家に住み続けられなくなれば、それは普通の賃貸住宅の契約通りに解約すればいいことで、家主はまた新しい借主を見つければいいだけです。
入居者も、長年払い続ければその家は自分の財産になるわけですから、多少無理をして高い家賃を払ったとしても、無駄にはなりません。家賃が払えなくなったり、別の場所に住まなければならないときは、普通の賃貸契約と同じように解約すればいいわけです。住宅ローンは、その家に住めなくなっても残債は払い続けなければなりませんが、家賃であればそのような縛りはありません。さらに、払い続けた家賃が惜しいから賃借人が親族などに権利を承継し、続けて家賃を払い続けることでいずれ自分の財産にする……それができれば、もっと便利です。
要は、入居者側からすれば、住宅代金を分割で払う。払えないときは家賃だったことにする、ということです。家主側からすると、売却物件の代金を分割でもらう約束をするが、約束を果たせてもらえない場合は、もらった分は家賃ということにして返さなくていい、というものです。
もちろん、法律上の問題や家主側の利回り設定など、クリアすべき問題は多々あります。しかし、格差が拡大し、「公務員や大企業勤務者でなければ住宅ローンが組めない」という声がさかんに聞こえるようになっている中で、ニーズは確実にあると思います。増え続ける外国人労働者が「自分の家を持つ」ことを支援するしくみにもなると思います。
誰もが負担感なく家を購入できるようにするには、住宅そのものの価格を下げることと同時に、このような「買いやすいしくみ」の研究も不可欠ではないかと、私は考えます。