【連載56】家は買うべきか借りるべきか
私が「高品質低価格住宅」にこだわるのは、日本の住宅は高すぎると思うからです。何に比較して高いか、それは、人の一生で得る収入に比べて高すぎるということです。
住宅は一般に、住宅ローンを組んで購入します。仮に3,500万円の住宅を購入し35年のローンを組めば、元利払いを合わせて4,000万円以上の支払いとなります。普通のサラリーマンの生涯所得は、2億円~2.2億円と言われていますから、一生で稼ぐ金の2割は家のために払うということです。多くの場合、住宅ローンを払い終わった頃には、修繕や改築、場合によっては建替え・住み替えが必要となりますから、2割は超えるとも言えます。都市部に一戸建てを土地付きで買って、生涯所得の3割以上を住まいにつぎ込むことになる人も少なくありません。果たしてそれは、幸せなことでしょうか。稼いだお金は、もっとほかに遣いたい、遣うべきではないか、そう私は思います。
地価を下げるということを私たちがやっていくのは至難ですが、品質の良い住宅を、できるだけ安く建設し販売していくことは、知恵を出し合えば何とかできるのではないかと思います。
ところで、4,000万円を35年間払い続けるのは、10万円の借家に35年間住み続けるのとほとんど変わりません。しかも借家であれば、付随する税金や修繕の費用は、原則として家主の負担ですから、持ち家よりも払う金は少なくなります。だったら持ち家よりも借家を選ぶ……というふうには、人はなかなかなりません。日本人には「持ち家信仰」がありますし、「何千万円払っても自分のものにならないのは損だ」という考えもあるからです。「家は買うべきか借りるべきか」は、昔からある議論です。
では、賃貸住宅に入居してずっと家賃を払い続け、ある一定の額になったらそれをその住宅購入代金に充当する、というしくみがあったらどうでしょうか。
自宅以外にも家を建てることができる資力のある人が、頭金を払いローンを組んで一戸建てを建てます。その家に、今は若くてお金もなく、ローンを組むこともできない若い夫婦が賃借して住みます。そして10年間、毎月しっかり家賃を払い続けたところで、夫婦は貯金やローンによって家主から、家主のローン残債分プラスαで家を譲ってもらうことができる……そういうしくみは便利ではないかと私は思います。