【連載55】不要な住宅は市場から駆逐される
賃貸住宅の空室のほとんどは、築30年を超えた古くて狭い住宅です。2011年に閣議決定された「住生活基本計画」では、世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準「誘導居住面積水準」を提示しています。
具体的には、世帯人数が1人であれば40~54㎡、2人ならば55~64㎡、3人なら65~84㎡、4人以上は85㎡以上としています。
「住生活基本計画」では「最低居住面積水準」を25㎡としていますが、政策的に「この住居に居住する世帯を早急に解消することを目標」としています。「住宅・土地統計調査報告」では、面積による区分の最小を「29㎡以下」としていて、その戸数は約486万戸としています。さらに、「誘導居住面積水準」に満たない30~39㎡は約237万戸。つまり40㎡未満の約723万戸は、「(将来は)人が住むべきではない住宅」であり、空き家の予備軍だと言えます。
では、「誘導居住面積水準」を満たしている住宅の需要と供給はどうなっているのでしょうか。
世帯人数1人・40~54㎡の住宅は必要戸数(需要)約841万戸に対して実際の戸数(供給)は約317万戸。2人・55~64㎡は需要約294万戸に対して約160万戸の供給、3人・65~84㎡は需要約179万戸に対して約136万戸の供給、4人以上・65㎡以上は需要約145万戸に対して約120万戸の供給となっています。つまり、「誘導居住面積水準」を満たす住宅は、実に約723万戸も不足しているのです。
この数字のうち特に着眼したいのは、2人以上で「誘導居住面積水準」で満たす住宅、55㎡以上の住宅の不足戸数、約200万戸です。これが、私たちが提唱する戸建賃貸住宅の市場なのです。
巷間では「賃貸住宅は供給過剰」と言われています。しかし、このデータを見れば決して供給過剰ではないことがわかるはずです。不要な住宅は淘汰されますが、必要とされる住宅はまだまだ足りていないのです。
先月発行の『YCY News』で私が「200万戸も不足しているマーケットに、積極果敢に踏み込んでいこう」と呼びかけたのは、このようなデータを根拠にしているのです。