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社会問題化する「空き家」

【連載54】社会問題化する「空き家」

 総務省の「住宅・土地統計調査」では、「住宅」を「居住世帯がある住宅」と「居住世帯がない住宅」とに分けます。「居住世帯がない住宅」は、「一時現在者のみの住宅」と「建築中の住宅」、そして「空き家」に区分されます。
 ですからこの統計調査での「住宅」の数は約6,300万戸で、そのうち居住世帯がなく、一時現在者のみの住宅でも、建築中でもないものが「空き家」です。でもこの中には、別荘などの「二次的住宅」も含みますので、これも除外したものが、我々がふつうに考える「空き家」ということになります。統計では、「賃貸用の住宅」で約429万戸、「売却用の住宅」で約31万戸、そして「その他の住宅」で約318万戸が空き家となっているとしています。
 「その他の住宅」の空き家とは、賃貸用でも売却用でもなく人が住んでいない住宅で、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅と、空き家の区分の判断が困難な住宅を指します。この空き家が、現在社会問題化しています。
 例えば、限界集落など人口減少で人が住まなくなった空き家がこれに含まれます。人口が流出し過疎化し高齢者ばかりとなり、さらにその高齢者がいなくなり空き家だけが残っているという地域が、全国に増えています。この空き家を生活の場として再活用していくのは大変難しいことです。
 限界集落とは、過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指しますが、山間部や離島など現在の過疎地に限らず、計算上は日本の多くの都市が近い将来、限界集落となるという説もあります。先月発行した情報誌『YCY News』で紹介した、千葉県佐倉市の戸建賃貸住宅への家賃補助の政策は、空き家対策と人口流出防止を同時に行おうという目的があります。人口減少と少子高齢化が進む中で、こうした空き家は増え続けますし、東京などへの人口集中は今後も進むでしょう。この問題は、一朝一夕では解決できません。
 そしてもう一つ、増え続ける空き家とは、数字を見るまでもなく「賃貸用の住宅」の空き家です。空き家の半分以上は賃貸用で、その大半は、集合住宅の空室なのです。
 さらに賃貸住宅の空室のほとんどは、築30年を超えた古くて狭い住宅です。高度成長期の住宅が不足していた時代の感覚のままに造られた住宅が、今は人々から見向きもされず、空き家となって朽ちていくのを待っているのです。