【連載47】仕事の安定供給が手間賃を低減する
高品質で低価格の住宅を供給するために私たちは規格住宅を提案しています。工場生産された材料や機器を、大量発注することでコストは下がります。洋館家グループはこれを全国ネットで行っていますから、メーカーの商品を全国どこでも同一価格で提供することができる。特にこれは地方の施工店や施主に大変喜ばれています。
本部が提供する材料や機器は安くなりました。でもそれは、住宅建築に関わるコストの半分程度で、あとの半分は、現地調達の資材、そして職人の手間賃です。ここの標準化と低廉化がとても難しいのは事実です。
建築の場合、地域の気候風土によってコストに違いが出るのは仕方ありません。寒冷地であれば凍結深度の問題で基礎を深くしなければなりません。それによってコストは余計にかかります。このことは建築に関わるものであれば誰でも知っていますからお客様に説明できる。そしてお客様も、説明を受ければ理解し納得できる。でも、それ以外の、地域ごと、会社ごとで異なるコストについては、しっかりと説明できる業者は少ない。しっかりとした説明ができないと、お客様は納得しない。その一つが、職人の手間賃です。
東日本大震災の復興で、建築業界では全国の職人や作業員の多くのを、東北に獲られているといわれてきました。そして去年の熊本地震の後、九州や関西地区の職人や作業員が熊本に動員され、人手不足となっています。東京オリンピックを控え、東京の建築需要も益々旺盛になっていくでしょう。こうした特需による人手不足だけでなく、もともと大工をはじめとした職人は減少し、高齢化していたという現実があります。
需要が不足すれば手間賃は高くなります。今はとにかく頭数が足りないからと、お金での引っ張り合いもあります。誰だって、少しでも高い賃金が欲しいけれど、この状態が建築価格の高騰につながり、お客様だけでなく建築業界自体を苦しめています。でも、こういう状況を作ったのは建築業界自身の責任です。「仕事がある時は来てくれ、でも、ない時は自分で仕事をさがしてくれ」という請負制度が大工さんらの仕事を不安定にし、若い人が育たない環境にしてしまった。そして需要と供給で、駆け引きで手間賃が決まるような世界を作ってしまったと私は考えます。
大工さんらに常に均一で仕事があり、収入の見込みがしっかり立つ状態があれば、手間賃の乱高下もなくなります。後継者も育ちます。そしてそれが建築価格の適正化になり、ひいては住宅の価格を引き下げると私は考えます。