【連載42】知恵こそ価値を生み出す唯一の方法
知識と知恵の基準が違うと、相手が求める価値観も違います。売れる商品を考えるには、「相手との良好な関係性を築くための知恵」が求められているのです。ここに気づくことが大切です。
顧客満足度は供給者(生産者)と消費者(需要側)の関係によって成立しています。供給者がいくらいいものだと言ったところで、消費者がそう思わなければ、満足しなければ売れません。
ものを売るにあたっては売り手(生産者)の理屈だけではだめで、生産と消費が表裏一体であることを理解することが重要です。考えて見れば、個人も企業も、そして国家も、生産と消費から成立しています。
情報化時代においては知識はどこから得ることもできます。しかし知識だけをビジネスに活用する時代は過去のものとなりました。これまで何度か述べてきたように、本来、知識はわが身を守る能力として評価されてきましたが、これからのビジネスにとって最も必要とされるものは知識ではなく「知恵」です。価値を生み出す唯一の方法は知恵しかないからです。
現在が価値の時代であることを、今一度確認してみましょう。これについては、このコラムの初期の頃にも述べましたが、概括的に振り返ってみます。
戦後の日本は安価な労働力を地方から都市部に集中させ、生産資本主義に取り組んできました。基本条件は「安い労働力、高い技術力、集約する工場」で、東京、横浜、千葉、名古屋、大阪などを核とした太平洋ベルト地帯を形成し、アメリカやヨーロッパなど当時の先進国に安価で良質な商品を輸出してきました。その結果、貿易国としてミラクル成長を遂げて、世界第2位の経済大国になりました。
またその間、国内では様々な政策が実行され、中産階級が大きな層として形成されてきました。1960年の池田内閣による「所得倍増論」は、10年の目標を7年で達成しました。さらに1972年に誕生した田中内閣が推進した「日本列島改造論」など、日本の経済成長に大きく寄与した政策が次々に実施されました。この時代は、政治、行政、民間が同一方向を見て、一体となって成長を実現させていきたわけです。
この過程で、日本国内は「量」を求めた「需要過多」の時代から、成長に合わせ「質」の時代へと移行しました。「需給の均等」が見られるようになったわけです。そしてやがて現在の「供給過多」の時代を迎えました。「量」でも「質」でもなく、「価値」の時代となったのです。量の時代、質の時代の思考では合わなくなっているのです。現在の状況で事業を成功させるには、繰り返して述べますが、価値を生み出す唯一の方法は知恵しかないことを知ることなのです。