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消費者の満足はどこにあるのか

【連載38】消費者の満足はどこにあるのか

 成熟社会の市場では、感性や価値観など様々な「消費満足」を叶えないと取引は成立しません。消費者は満足を商品だけでなく、対応する供給者、保証やメンテナンスなど商品の背景にある付加価値までをも判断基準とします。
 どんなに優良な商品であっても、対応する供給者に不満があったり、保証やメンテナンスが不十分であったりすると、消費者満足は「最大効用」に達しないわけです。
 このように見ていくと、消費者の満足とは「費用と感性の交換価値」と言い換えることができます。払った費用よりも高い価値を得たと感じてもらえる商品の供給が必要です。
 ところで、供給体制のあり方と需要過多の市場を育成することは違います。供給体制のあり方は合理化や能率化・効率化などを追求して原価や固定費を下げ、商品の価格を競争価格に適用できるように努力することを意味します。それは消費者が求める最大効用の要因からすると、一部にしかすぎません。ごく簡単に言えば、安ければいいだろうという供給側の努力だけでは、消費者は購入しないのです。安さは、消費者が求めるすべてではないのですから。
 消費者がぜひ買いたいと思う需要過多の市場を育成すること、すなわち売り手優位の市場を作り上げるためには、価格は大切ですが、それだけではないのです。その価格に内包されている付加価値が評価されたとき、新たな需要が生まれます。
 したがって消費者満足の最大効用を達成し、消費者がぜひ買いたいと思う需要過多の状態を作り上げるためには、合理化や能率化・効率化も大切ではあるが、最も大切なのは「商品の付加価値」ということになります。価格が高いか安いか、それだけで物が売れるかどうかが決まったのは、もう過去のことなのです。
 供給過多の時代にあっては、消費者の動向により売上と利益とが決まってきます。消費者動向を誘引できる付加価値を提供することが、需要過多の市場を自らの商品について作り上げることができるわけです。市場には供給者・生産者が常に複数存在しますから、そこで選ばれる、自らの商品について「ぜひ買いたい」と消費者に言わせ、選ばれていくためには、徹底して付加価値の追求を行う以外ないのです。