【連載34】企業はどうして変わっていくのか
最近、ある老舗企業の事業再生策について意見を求められました。当社とは異なるサービス業の企業ですので、門外漢の私が各論について意見を述べても、それが的を射るかどうかわかりません。そこで、私自身が日頃考えていることの整理をしながら、サービス業や企業経営のあり方について意見をお伝えしました。その内容は、私たち建設業や不動産業にも通ずることがあるような気がしましたので、このブログでも改めて書いておきたいと思います。
その企業は、地場の老舗企業として、かつては「地域一番」の存在でした。しかし、現在では昔日の面影はなく、経営状態も厳しくなっています。私自身はその企業に対して「お客」の立場で長年接してきましたが、かつて隆盛を極めた頃は、経営者も従業員も「高い顧客満足度」の達成をめざして、質の高いサービスを提供していたと感じました。そして、その企業の現在の衰退は、顧客満足度の高いサービスがいつからか行われなくなったからだと私は思います。
お客様が満足しないのは、時代環境の変化に対応しなくなっていたということだろうと思いますし、また一方で「顧客満足」を意識しない、「我」の執着が経営者や従業員に起きていたのではないかと推察します。
この企業はともかく、いわゆる「老舗」と呼ばれる企業では、継続的な発展を続ける企業と、破滅的な衰退に向かう企業とがあります。その違いは何なのでしょうか。私は、それは創業から現在までの内的要因と外的要因とに分けられると考えます。
内的要因とは、純粋に顧客満足を最優先に、本来のサービスを提供し続けるかどうかということ。優越感や過剰な自我を持たない謙虚さが、顧客満足が高いサービス提供を継続できるのだろうと思います。
一方、外的要因とは、時代環境の変化です。戦後70年を経た日本は、経済の成長、国民所得や可処分所得の向上により「量」の時代から「質」の時代、さらには「価値」の時代へと多種多様に移行しました。一人一人の感性や価値観が、これほどドラスチックに変化した時代はありません。この変化に、個人も企業も翻弄され、その対応の仕方により「成長と衰退」に選別されていったのです。
大きな視点で経済を見ると、未来永劫まで安定した経営を行える企業というのは皆無と言っていいでしょう。安定するための価値観やモチベーションを持ち続け、常に「高い経営理念と価値観を持ち、社会に貢献する」ことを念頭に持ち続ける……それが、企業存続を保障する唯一の道ではないかと考えます。