【連載24】「高納税時代」のビジネスを考える
平成26年の歴年での全体の正味資産は3,108.5兆円で、個人金融資産約1,700兆円です。うち、60歳代以上が約6割、1,000兆円の資産を保有しています。この20年間で60歳代以上の保有割合が倍増しています。そして貯蓄の上位保有率をみると、20%の世帯資産保有が全体の60%を超えています。わかりやすく言いますと、60歳のお年寄りが60%を超えた資産を持っているということです。
資産形成の中で、60歳以上の貯蓄の目的として多いのは「病気と介護の備え」です。高齢者が増えているからでしょうか、62.3%の人がそう答えています。同じ回答は、平成13年度には39.5%でした(内閣府調査)。また、長命になっていますから「生活の維持」が資産形成の目的の第2位となっています。
一方で、「資産を子供に残す」と答えた人は、わずか2.7%。今の課税対象者は、自分たちが生きていくために精いっぱいで、子供に相続の資産を残す人は3%程度しかいませんよ、ということのようです。
一般の人はこのように考えていますが、全体の正味資産が3,100兆円もあるのですから、国が考えるのは相続税による徴収です。2015年の1月1日から相続税の基礎控除が下がり、最高税率が5%上がりました。それから所得税の最高税率も上がりました。そして、見落とされがちなものとして出国税があります。これは、パスポートを出す出国ではありません。お金の出国です。
1億円の株券などをシンガポールで譲渡すると、向こうは無税ですから、1億円のものが1億円で使えるのです。こういうふうに高額所得者が海外に日本の資産を持ち出すことの歯止めとして、みなし課税を15%かけますよというのが2015年の7月1日から始まりました。皆さんも持ち出す時には税率をよく相談なさってから持ち出されたほうがいいと思います。
そして、消費税を10%に上げてくるといいます。財の再配分というのは、政治・行政を通して平等に行われるということです。相続税、出国税、消費税、諸々含めて、高額所得者の所得税も5%に上がっています。このようにして財の再配分が起きてくるのです。3,100兆円を税というかたちで合法的に調整を図っていきましょうという時代に入りました。
財の再配分、高納税時代……だから何が起きるのか。ここからが我々が知恵を絞り、こうした状況で何をどうやってこれを事業化していくかを考える上でのポイントになってくるのです。