【連載20】空き家の賃貸に補助を出すだけでは解決しない
今年1月16日付の日本経済新聞に、国土交通省が増え続ける空き家を準公営住宅として活用できるよう制度設計を行い、2017年の通常国会に関連法案の提出を目指すという内容の記事が掲載されました。この時点では日経だけの記事でしたので詳細は分かりませんでしたが、増え続ける空き家の活用と財政難で公営住宅が建てられない自治体を補完する一石二鳥の法案ということのようです。
しかし、空き家対策と賃貸住宅の空室対策が合致するかは慎重に考える必要があります。この施策に対する反対論として、空き家の“準公営住宅”が増えることは、地域の賃料の下落を招きかねないとう懸念もあります。すでに民業を圧迫するのではという批判も出ています。
確かに、空き家の問題は深刻です。2013年度の時点で空き家は820 万戸とされています。これは5年前に比べ63万戸(8.3%)の増加です。総住宅数に占める空き家の割合は、実に13.5%となっています(平成25年住宅・土地統計調査・速報集計)。それでも、この問題の解決には、ただそれを“準公営住宅”にするのではなく、例えば自治体による一括借り上げや空き家処分(売却や転用等)を促進する施策等、地域経済の活性化につながる施策を望みたいものです。
ところで、この件で気がかりなのは、空き家利用という点で「賃料が安いのだから古い家でも良い」という考えがありはしないかということです。そうであれば、時代に逆行します。
このブログで何度も強調しているように、私たちか追い求めているものは「良質な住宅」の供給です。日本の住宅は良くなりました。でも、賃貸住宅はまだまだです。「日本の賃貸住宅を変えていこう」は、言い換えれば、「良質な賃貸住宅を提供していこう」ということです。人が住まなくなっている家のすべてが、古くて修繕が必要な家だとは言いません。でも、低価格で高品質な住宅に建て替えられるなら、その方が所有者の資産価値も入居者の住み心地もアップするという場合が圧倒的なのではないでしょうか。
前回まで、「地方創生は良質な賃貸住宅の提供から」として公営住宅への地元の民間資本による戸建賃貸住宅の供給を提案してきました。それによって行政の負担が軽減すれば、行政は住民への福祉や医療などの行政サービスに税を振り向けることができます。公共施設や道路等インフラの老朽化の改善やメンテナンスなど、行政が本来行うべきモノとコトにお金を使うことができます。そのような観点がなく、ただ空き家を貸す人や借りる人に補助を出すだけでは、人々の豊かな暮らしは実現しませんし、地域が活性化することもありません。地域が活性化せず疲弊すれば、補助も出せなくなるのですから。