【連載19】地元行政の増収効果に結びつく形で
前回、地方創生は良質な賃貸住宅の提供からはじまるという趣旨で、私が考える「安定住居を供給する提案事項」をあげました。このことについて、もう少し補足しておきます。
公営住宅を地元の民間資本による戸建賃貸住宅で供給する場合、公営住宅の賃料と回収可能な建設費としなければなりません。仮に賃料を月額8万円で設定したとすると年間での賃料収入は96万円です。これを前提とした1棟の建設コストは、本体価格、外構、諸経費すべてを含み960万円以内、つまり年間利回り10%設定であれば妥当だと考えます。もちろんこの価格内で、耐震構造、温熱対応の基準をクリアしていなければなりません。
また行政は民間が建てたその戸建住宅を25年間賃借するわけですから、その管理コストも考慮しなければなりません。そして、そのコストは、行政が自ら建てるよりも3分の1あるいは4分の1ぐらいで完結すれば、行政側の負担は大いに軽減できます。民間がやれば、そのぐらいで済むはずです。
さらに行政のサービスとしては、入居基準を決めて補てんする費用を検討する必要があります。子育て世帯であれば子供の数に応じて設定すべきでしょうし、高齢者や障害を持つ人など社会的弱者に対する支援も当然検討されなければなりません。そしてもう一つ大事なのは、「地方創生」が大目的なのですから、転入者に対する優遇措置も考えるべきでしょう。
「地方創生」が大目的という観点から、公営住宅を民間資本の力で建設するわけですが、その「民間」とは地元資本でなければなりませんし、建設や維持管理、入居者の経済活動などすべてが地元に経済効果をもたらすものでなければなりません。建設は地域の事業者と労働者に発注され、固定資産や家屋税が発生し、入居者の住民税、所得税、消費税などなど、地元行政の増収効果に結びつく形が生じることが大切です。
公営住宅を地元の民間資本で行う利点を今一度列挙します。
①行政予算の削減
②維持管理料の削減
③疲弊の防止
④地域経済の活性化
⑤住民サービスの差別化
⑥転入者の増加
⑦固定資産税、住民税の増収(農地から宅地への固定資産税、建築課税、所得税、消費税、住民税など)
⑧行政の安定
⑨税収配分の有効化
などなど、多数のメリットが生じるのです。