【連載17】戸建ての公営住宅で子育て支援を
少子化や景気低迷による国内生産拠点の閉鎖などにより、街の活力が失われつつあります。これは地方でより顕著であり、店舗の閉店などによる地方都市の「シャッター通り」は、今や全国で当たり前の光景となっています。もちろん、地方も手をこまねいてただそれを傍観しているわけではなく、行政は地域活性化のためにさまざまな方策を講じています。「地方創生」の取り組みです。しかしどれも、決定打とはなっていません。
以前から私は思っているのですが、地域行政は小さな独立国家と同等です。住民は納税の義務を負い、行政は住民サービスへの義務を負う地方自治体を、仮想国家としてみてみることができます。そして、地方自治体を仮想国家と考えた場合、政治、行政、住民のコミュニティーが一体となって初めて「地域の創生」が可能になるのではないでしょうか。「全体の未来像」が明確になったときに、「地域の創生」の取り組みの効果は発揮されるはずです。
さまざまな施策の前提は、税収が集まるということ。そのためには、住民が納税する環境を整備することです。まずは、人が住む環境づくりが大切で、住みやすい、住みたいという環境づくりを住民と行政とが共有することが必要です。「住民と行政の共存」は責任の分担と明確化が必要で、住民は納税の責任を、行政は、税「財」によるサービスの責任をしっかり果たさねばなりません。
そのサービスの責任として、住宅の提供を考えてみます。前述したように、かつて行政は、不足する住宅を補うために公営住宅を供給しました。その大半は集合住宅で、「量」を供給したものでした。時代が変化して、現在それらの集合住宅には空室が目立っています。人口減もありますが、「質」を求める人々のニーズに、公営住宅は答えていないのです。
「地方創生」の取り組みとして多くの自治体が、子育て支援を行っています。住宅の問題は、子育てにとって最も重要な問題の一つです。子を持つ世帯や出産適齢期の世代に各種の給付金を支給し、優遇策を講じ、割安な賃料の公営住宅への優先入居を行っても、その住む家が「壁一枚が他人」という共同住宅であっては、子育てには多くの制約が生じます。集合住宅の近隣トラブルの大きな原因の一つが音の問題であり、子を持つ家庭の最大のストレスも、子供が家の中で発する音の問題です。子育て支援をするのであれば、行政は戸建ての公営住宅を提供すべきだと私は思います。