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低価格と高品質の両立をめざす②

【連載14】安さの追求よりも、まず価格の明確化が先決

 外国人労働者の活用や住宅建築の規格化、マニュアル化が必要だというと、既存の建築業界の人の中には眉をしかめる人も少なくありません。しかし、世の中の流れをしっかりと見れば、業界のさまざまなしくみや習慣は、改革が求められているのです。
 例えばアメリカでは、住まいを建てるのに自分でホームセンターに行って材料を買い付け、職人組合に連絡をして「これこれの建物を、このぐらいの費用で建ててくれる職人を派遣してくれ」と頼むということも行われています。DIYに近いことが、住宅の建築で行われているのです。日本でもこのようなことが行えるようになるかもしれません。と言うよりも、行うようにならなければなりません。これをカタログやインターネット、テレビショッピングでやれば、まさに、“建築通販”です。
 すべての住宅がそうなるわけではありませんし、そうなる必要もありません。しかし、自分自身の手で家を造りたいと考えたらできてしまう、という選択肢も必要だということです。
 これまで述べてきた私の“建築通販”を目指す取り組みは、何も「家をただ安く造ればいい」ということではありません。家造りは人それぞれにこだわりがあって良いわけですし、こだわりを実現しようとすれば、コストがかかることは当然です。価値があるものが高いのは当然で、高い住宅があっていいし、高額物件しか扱わないという建築業者がいても構いません。ただ、私が主張したいのは、安くても高くても、価格は明確でなければいけないということです。
 江戸の昔、「現金正札掛け値なし」を宣言した越後屋は大躍進しました。そして現代において、「現金正札掛け値なし」は一般の小売業としては当たり前のことになっています。建築業界は、何にいくらかかっているかわからないと言われてきました。しかし、そういう商売は、これからは難しくなるということは、他の業種を見れば明らかです。
 そして、何がいくらかがはっきりして初めて、価値に対する値段の高い安いも判断できるようになります。当社が進める低価格・高品質住宅の取り組みは、注文住宅などで高価格・高付加価値を追求する業者の方々と敵対するわけではなく、真に良い住宅を正直に建てようとする事業者と一緒に勝ち残っていくための方策でもあるのです。