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家賃は誰が決めるのか②

【連載10】根拠をもって説明できる建築を

 今やコンビニのおにぎりや弁当、宅配便の運賃、ガソリンの単価など全ての商品に値段がありますが、なぜか建物には値段がありません。資産だからという人もいますが、それなら土地にも価格があります。建築には商品という感覚がないのです。従ってその都度見積もりして価格を出すため、膨大な経費が発生して価格に乗ってくるのです。
 また、この業界は本体価格の基準がないため、照明器具は別途とか、電話やテレビの配線は別途など、高額なのに消費者には理解できないことばかりです。そして、価格構成の大半が請負制度となっていますので、材料と工賃が内包されたインコストなのです。この集合体の合計と建築業者の経費が建築価格となるわけです。建築業者が「賃貸住宅の家賃を決めていた」……、つまり今までの賃貸住宅市場は、建築業者の提示する金額によってつくられてきたのです。
ところが、現在建築業者は市場での主導権を失いつつあります。それは市場メカニズムの変化に建築業界がついていけなくなってきているからです。
大家さんは入居者の皆さんに喜んで入居してもらい、長期に渡り安定的な経営をしたいわけですから適正な建築価格を求めるのは当然で、むしろ開かれた価格構成(本体価格と標準仕様)を業界側が提示すべきです。家賃は入居者と大家さんの接点が適正価格でなくてはなりません。建築価格が高いか安いかは、市場の必要性が判断するのです。ですから見積もりを提示して採算が合わなければ、建築請負工事は成立しません。
建築業者は市場採算性の中で工事請負契約を成立させなくてはならないので、「市場の限界性*1と建築コストの限界性*2」の両立を目指すことがこれからの使命となるのだと思います。


*1市場の限界性…家賃を払う入居者の価値観と事業としての採算性を求める大家さんの利害一致点

*2建築コストの限界性…市場の限界性を実現できる建築価格でなおかつ適正利潤が確保できるコスト