Member Interview 29
施工店・販売店インタビュー
スタッフの“多能工”化が
低価格・高品質を実現する
株式会社Run
代表取締役 下川 孝司 氏
洋館家本店では、住宅建築の低価格化や高品質化を目標に商品開発や会員サポートを行っています。一方、独自の工夫によりその追求を行い、大きな成果を上げている会員もいます。今回は、スタッフの“多能工”化により低価格・高品質を実現し、2015年の創業以来業績を急伸長させている株式会社Run・下川社長にお話を伺いました。
株式会社Run
山梨県南アルプス市上今諏訪1310-3
代表者/代表取締役 下川 孝司
営業種目/建築工事一式、賃貸マンション・アパート経営、リゾートコテージ経営
電話/055-282-0299
WEB/http://www.run-y.jp
「良いものを安く」の考え方が一致した
ーー洋館家との接点から伺います。
下川 1年前に戸建住宅の建築を受注した際、なるべく低コストで品質の良い住宅を造りたいと考えました。図面も引いてみましたが、自社で最初からやるよりは既存のシステムに乗った方が実現しやすいと判断し、いろいろ探した中で洋館家さんを見つけました。本部に話を聞きに行き、実際の建物を見て、これならいいと思いました。実は私は、フランチャイズのシステムに抵抗があり、今までは誘われても加盟しませんでした。ほとんどの場合、本部だけに利益が出る仕組みですから。でも、洋館家さんは違うなと感じ会員になったわけです。
ーーどのような点が違うと感じたわけですか。
下川 誤解を恐れずに言えば、洋館家さんの仕組みは縛りが緩い点が良い。フランチャイズの本部から「こうやったら利益が出ます」という仕組みを提供されたからといって、ただそれをやれば儲かるということはないでしょう。その仕組みを研究し、自分なりに工夫と努力をしなければだめです。洋館家さんの仕組みは、私たち会員が自ら工夫できる余地がたくさんあるという点が魅力です。
ーー自社で戸建賃貸も手掛けていますね。
下川 依頼された新築を洋館家さんでやってみてこれは良いと実感し、自社でも戸建の賃貸住宅を建てることにしました。最初の物件は、自社所有マンションの駐車場横の空いたスペース。建てているうちに入居が決まりました。もともと当社の賃貸物件は自社で管理とメンテナンスを行い、賃料も低く抑えていますから入居率が良いのですが、中でも戸建賃貸はすぐ決まります。良いものを安く出せば、評判が評判を呼んで仕事が増え稼働率が上がる。例え利幅が小さくても、数が出ますから結果的に儲かる。一時的な利益を追わず、「損して得取れ」というのが私の信念で、これはあらゆるビジネスで言えることですし、建築や不動産でも同じだと思います。洋館家さんの会員としてやってみようと考えたのは、基本の考えが同じだと感じたからです。
施工例
職人の“多能工”化がコストダウンとなる
ーー低コスト化のための自社の工夫とはどのようなことですか。
下川 簡単に言えば、一人が何でもやるということです。スタッフの“多能工”化ですね。当社のブログには施工風景の写真をたくさんアップしていますが、それをご覧になればわかります。こっちの写真で大工をやっていたスタッフが、こっちではクロスを貼ったり塗装をしたりしている。ふつう現場は、それぞれの職人さんが専門分野を分担します。専門家がやった方が品質も効率も良いからで、当社も基礎などは外注です。でも、全部が全部、分業がいいかというとそうではない。むしろ、ほとんどの仕事は一人でできますし、その方が効率がいい。職人さんは器用ですから、覚えればほとんどのことはできます。一人がやれば、現場に行って、自分の番が来るまで待つことはないし、その場で段取りの変更もできます。この時間短縮がコストダウンにつながるのです。
施工現場
ーー貴社だから可能ということになりますか。
下川 確かに、これは私の体験から発案したことです。私はもともと脱サラして住宅の掃除仕事を始めました。集合住宅の退去後の掃除をしながら見様見真似でクロスの貼り替えなどを覚え、そのうちリフォームを受注するようになり、一人でできませんから職人を雇いました。安く受注していましたから、職人を雇えば持ち出しになることもありました。それでも私は現場で、職人の仕事を一所懸命盗んで自分でできることを増やしました。仕事が増え、職人も増えましたが、私にできるんだからと他の職人にも別の仕事をお願いしてきた結果、当社のスタッフは全員が多能工になったわけです。私が最初から建築業界の人間だったら、職人さんにそういうことは頼まなかったでしょうね。
建築業界の多くの人は、「職人の“多能工”化は無理だ」と言います。でも、そう思う方は私のところに来て、実際に現場を見ていただければと思います。一人がいろいろな部分を担当し、しっかりお金が取れる仕事をしています。そのように当社のスタッフは何でもやりますし、おかげさまで仕事もどんどん受注していますから忙しい。それでもしっかり休みを取ってもらっていますし、できるだけの分配もしています。そうすることで仕事の品質は上がります。
複数の持ち場を担当
将来を考え会社の“引き出し”を増やす
ーーリフォーム、新築、不動産事業とどんどん拡大していますね。
下川 独立以来、良い仕事を安く提供しようということでやってきた結果、特別な宣伝をしなくても仕事をいただけるようになりました。もっとも、独立した頃は、自分がアパートを所有するなどとは考えてもいませんでした。一つの仕事が、新しい仕事につながっていくのです。
不動産事業は、物件の修繕を頼まれたオーナーから購入しないかと言われたのが発端です。その後、1棟買いして自社でリノベーションして貸すということを始め、現在10数棟を保有し管理しています。物件はみな何かあればすぐ対応できる距離の範囲にあります。
リフォームで実績をつくれば、新築の話がお客様の方から来ます。その結果、洋館家商品と出会いました。賃貸物件を購入し管理していれば土地の情報も入ります。良い土地なら自社で建物を建てる……このようにして仕事が広がっています。ただ、私はどれも自分の目の届くところでやりたいと思うので、これ以上仕事は増やせないくらい忙しいというのが目下の悩みです。
ーーさらに新たな事業も展開されるそうですね。
下川 八ヶ岳の山麓にペット可のコテージを建設します。これは宿泊業という新規事業へのチャレンジです。いまその分野の情報収集もいろいろ行っていますが、この事業も良いサービスを安く提供したい。ただ値段が安いということではなく、この値段でこれだけのサービスが受けられるのかと言っていただけるようにしたいということです。まずは、そもそもの建設投資を抑えねばなりません。そこで、建物は洋館家の商品で建てます。
ペット可で泊まり心地の良い施設というのは私自身が求めていたものです。一つの夢の実現ではありますが、将来を考えた会社の“引き出し”を増やしていく取り組みでもあります。
コテージ完成予想図
web限定記事
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喜ばれグレードの高い新事業へ
ーー新規事業について、もう少し教えてください。
下川 コテージの経営については、ずいぶん前から漠然とやってみたいとは思っていました。一つの仕事が、新しい仕事につながっていくと申しましたが、仕事をしていくうちに土地の取得もできるようになりました。洋館家さんの会員になり低コストで高品質の建物が建てられるようになりました。そのような中で、山梨県で新たに事業を支援する制度があることを知り、それならばと手を挙げました。大泉村というところに約5,000平方mを取得し、10棟のコテージを建てる計画です。
コテージは単にペット可というだけでなく、ペットや一緒に遊ぶお子さんたちが喜ぶような配慮がされた宿泊施設、ある程度グレードの高いものにしたいと思っています。図面
ーー事業計画を立てるのも大変ですね。
下川 これまでも銀行融資を受けるために何度も事業計画を立ててきました。作成した計画による賃貸経営も土地購入による事業も、どの事業も提出した計画通りに進めてきましたから、銀行の信頼は得ています。
土地購入で言えば、売買や分譲を考える業者は全体が造成しやすい土地を選び、段々になった土地は避けますよね。当社の場合、段々になったところも一緒に買いますから比較的安く買えます。造成しやすいところは売り、難しいところは自社の賃貸物件を建てます。そのように選択肢を広く持つことでリスクを減らし利益も出せます。そういう事業計画の立て方をしてきました。
もっとも今回のコテージ事業は、土地を買って建物を建てるだけでなく、運営も行いますからいろいろ大変かもしれません。それでも銀行からは、今回の事業についても期待していると言ってもらっています。複数の持ち場を担当
本部任せにせず自分で工夫する
ーー最後に、他の会員やこれから会員になろうとする方へのメッセージをいただけますか。
下川 本部の話だけではなく、実際にどう考えビジネス展開しているかご相談があれば現場見学等、歓迎させていただきます。
当社がやっていることはあまり前例がなく特殊に見えるかもしれませんが、お客様にいかに喜んでいただくかを追及した結果、そこに行きつきました。洋館家さんのことを知り、福田社長とお話をして、僭越かもしれませんが同じようなことをお考えだと感じました。
洋館家さんも会員をいろいろと応援してくださいますが、当社の場合、特別な営業等することなくありがたいことに仕事をいただいております。それは今までの仕事の結果でそうなっているわけです。正直、セールストークや、お客様をその気にさせるような仕掛けは、今のところ当社には不必要です。たくさんいただいている仕事、しかも薄利で受けている仕事でどうやって利益を出していくか、そこを追求しています。
どう利益を出すかを考え工夫するのは自分自身です。本部任せにはできません。仕入れを安くすればいいとか工賃を下げさせればいいということは、他人任せの方法です。自分たちでできることを考える。例えば、いかに効率を上げていくかを工夫する。3日かかることを2日で仕上げれば、その分のコストが浮きます。それをお客様とスタッフとに還元すれば、また新しい仕事につながり良い仕事につながる。私はそう考えます。成功するかどうかは、自分次第なのではないかと考えております。施工現場