洋館家本店グループ代表 福田 功
2023年(令和5年)1月31日、国土交通省から2022年(令和4年)の「建築着工統計調査」の集計結果が公表されました。それによれば、2022年における新設住宅着工戸数は859,529戸。対前年比0.4%と微増はしているものの、着工戸数は低下傾向にあります。この流れはもはや止めることはできません。私たち洋館家本店グループは、住宅・建物の供給事業者として、時代の流れに対応したビジネスを追求し、勝ち残りを図っていきます。
新設住宅着工数が減少し続けることは以前から言われていることです。かつてバブル経済期である1987年(昭和62年)度から1990年(平成2年)度において、160万戸台後半から170万戸台という高い水準だった新設住宅着工数は、バブル崩壊とともに大幅に減少しましたが、1990年代前半は150~160万戸程度の水準で堅調に推移しました。その後、平成期の長い景気低迷にあっても、2008年(平成20年)までは100万戸以上の着工となっていました。しかし今や80万戸台。いずれ70万戸を下回るのも時間の問題と考えられています。
この「建築着工統計調査」では持家、貸家、分譲に分けて着工統計を出していますが、別の調査、「住宅・土地統計調査」(総務省【表①】)によると持家と借家(賃貸)の比率は50年以上変わっていないにもかかわらず、さらに別の調査「厚生労働白書」(厚生労働省【表②】)によると、「30歳未満」「30~39歳」といった比較的若い年齢層や「40~49歳」、「50~59歳」といった働き盛りの年代で、めだって持家世帯比率が下がっているのです。
統計では、現状では1世帯あたり1.1棟の平均で持家を持っているということになっています。つまり0.1は余っています。人口減少と少子化で、この余っている持家は今後も増え続けます。
この持家は、多くの場合、住宅ローンという負債とセットになっています。一般に50代までで預貯金と負債が大体同額になるとされています。1,050万円ぐらいの預金と、同額程度の住宅ローンの残債。50代でトントンという現実に対して、人々はどう考えるようになったかという結果が、前述した持家世帯比率の減少ということになるのだと思います。
ライフステージが変化したにもかかわらず、持家は住宅ローンに縛られて住み替えができません。これまで本誌で何度も述べてきたように、住宅は人が暮らすためにあるのであって、住宅のために人の暮らしが制約されることはナンセンスです。そのことに気付く人が増えてきていると言えるのではないでしょうか。
さらに浮揚できない日本経済の状況で、所得増も見込めない人々は、将来にわたって長く抱え続ける住宅ローンというものを敬遠し始めている。あるいは住宅ローンを組めない人も出てきている。そういった現状を考えれば、私たち住宅供給事業者は、持家ではなく貸家、賃貸住宅の供給を主にしていくのは必然だと思います。
もちろん人口減少が進めば家そのものの必要数が減ります。すでに集合賃貸住宅は供給過剰と言われて久しく、賃貸住宅オーナーは空室の増加に苦しんでいます。一方で、戸建タイプの賃貸住宅は、需要に対してまだまだ供給が追い付いていません。
洋館家本店グループはこうした市場に対して、賃貸住宅オーナーと入居者の双方の満足を実現するものとして戸建賃貸住宅の供給を行っています。供給する住宅はオーナーの投資コストが抑えられ、結果として入居者の家賃負担が軽減する規格住宅としているわけです。
住宅を規格化し、流通も見直すことで徹底してコストを下げる……それでなおかつ供給側=施工店、販売店が利益を上げていくためには、規格に徹し数をこなすこと以外にありません。顧客の要望に応える注文住宅の営業手法で、ただ材料コストを下げるだけで持家を作っていたのでは、継続的に利益を得ることは難しいのです。
規格住宅のメリットは、少なくとも洋館家本店の住宅商品のメリットを最大限享受できるのは、賃貸住宅であることを会員の皆さんには今一度ご理解いただきたいと思います。また、この考え方を理解し主体的に取り組む会員のために、本部では現在、複数の戸建賃貸住宅を土地の仕入れから行い、客付けしてオーナーを募集る仕組みづくりにも着手しています。
洋館家本店グループでは「住む人の目的に応えた住まいの提供」を徹底して行うこととしました。若年単身世帯には通勤が便利な立地で、在宅ワークや趣味にも適合した住宅。子育て世帯には教育施設に近い立地で、音の問題等で気兼ねがない住宅。子供がいなかったり独立した後の夫婦2人の世帯には、通勤が便利で商業施設等生活利便性が高い立地の住まい。そして老人独居世帯には平屋等生活導線が良く、医療・交通機関等生活利便性が高い立地の住まい……こうした住まいを供給し、ライフ・ステージごとに住み替えてもらう提案を行います。住み替えが活発化すれば、空室や空家問題も解決の糸口が見つかるかもしれません。日本では住み替えは賃貸でしか難しいのが現実ですから、規格住宅による戸建賃貸の普及を徹底して行うことが、日本の住宅を変えていくことにつながるわけです。
もちろん、低コスト高品質の規格住宅の用途は、居住用住宅だけに限りません。前号でもご紹介している病院やホスピス等を補完・代替する賃貸型療養施設や、観光地・ゴルフ場等でのコテージタイプの宿泊施設など、目的別規格建築の供給でも着々と実績が積み上がっています。特に、コロナ禍で定着した家族葬や小規模祭事に対応した葬祭施設は、全国各地で展開されることになります。今後、こうした事例をどんどん会員にご紹介していきます。ご期待ください。