洋館家本店グループ代表 福田 功
依然続くコロナ禍の中で2022年を迎えました。昨年秋以降の感染者数減少で明るさが見えたものの、新年以降、変異株による感染者増が続いています。当面はwithコロナを念頭とした経営戦略が求められます。
昨年2021年は、コロナ禍とウッドショックに翻弄された1年でした。世界規模での感染拡大による生産と流通の停滞と、経済回復を急ぐ中での急激な需要増などで、原材料・資材の高騰が生じました。さらに日本においては、円安も輸入品高騰に拍車をかけています。
こうした中にあっても、国内の住宅着工件数は前年比4.1%増の84万戸となっています。巣ごもり需要、在宅ビジネス環境のニーズ増加といったプラス要因も働いての結果とも考えられます。
こうした状況は今年も続くと考えられています。住宅着工件数の各種予想では、前年よりは下がるものの、持家で27.2万戸、貸家で31万戸、分譲で24.4万戸、合計82.6万戸程度とみられています。受注残の処理などで、全体としては大きな落ち込みはないと判断されています。
しかしながら、資材や設備機器不足という現場は厳しい状況でもありますし、コロナ禍の長期化による国内経済の低迷の懸念、物価上昇や所得の据え置きなど、不安材料も多いといえます。
特に、我々の業界においては、資材や設備機器不足は納期の遅れとなり、それは売掛回収の遅れ、資金繰りへの影響を与えます。経営の舵取りが難しい年だと考える必要があります。
景気の先行きに対しては不透明感が拭えませんが、プラス要因もないわけではありません。住宅着工件数が思ったほど落ち込まないということは、住宅を建てる意欲がまだ多くの人にあるということです。積極的な営業活動、工夫した提案活動により、売上の獲得を図っていくことができると考えるべきでしょう。
長期化するコロナ禍に対して、政府は継続的に財政出動をするとしています。こうした動きに上手に連動し、住宅に対する潜在需要を顕在化させる取り組みが求められます。
感染対策は当面必要になると予想されます。つまり、「withコロナ」での営業活動が求められ、住宅商品の開発においてもそれが求められるということです。コロナ禍が収束した後のafterコロナにおいても、withコロナで採用された生活での習慣やしくみは残ると考えて、事業を組み立てていくべきでしょう。
2022年の住宅産業をめぐるプラス要因・マイナス要因
マイナス要因
▲ウッドショック、関連輸入品の入荷難、円安等による価格高騰・品薄
▲国内サービス、飲食業等の回復の遅れ
▲資材高騰や納期遅れによる利益減、回収遅れ
▲ガソリンや輸入品高騰による物価の上昇
▲所得の据え置きによる実質賃金の目減り、格差拡大
▲住宅取得減税の引き下げ、金利低下による逆ザヤ現象
コロナ禍にあっても住宅着工件数はそれほど落ち込まないという楽観的な見通しがあるものの、住宅着工件数の減少傾向は続きます。洋館家本店グループでは、afterコロナのビジネスを単なるコロナ禍からの脱却としてだけでなく、住宅着工件数減少下での新しい住宅供給のビジネスモデルづくりととらえています。
コロナ禍により、住まいに対する多様な考え方が一層顕在化しました。「住宅ローンを組んで一戸建てを建てて一人前」という高度経済成長期の考え方をせず、ライフスタイルに応じて賃貸を上手に活用したり、持家を買い替える層は、今後ますます増えていきます。
このような人々の住まいに対する考え方の変化に対応し、私たち住宅供給者も売り切り型のフロービジネスから、一顧客と繰り返し取引するストックビジネスへと転換していく必要があります。
本部ではこうした考え方に立って、施工店・販売店の皆様に、単に規格住宅と資材を販売するのではなく、ストックビジネス転換への手法や仕組みの提供に一層傾注していきます。
住宅販売のストックビジネス化とは、リピーターを創るということです。そのためには、高度経済成長期型の「家は一生に一度の大きな買い物」という意識から、お客様を解き放たなければなりません。ライフステージに応じた高品質な住宅を低価格で、あるいは賃貸で提供することで、お客様の意識を大きく変え、リピーターを増やすこと、それが私たちに求められています。
高品質で低価格な規格の戸建住宅を、マイホーム用と賃貸用とで市場に供給することで、ライフステージに応じた住宅の提供が可能となり、住宅のリピーターを増やすことができます。そしてリピーター獲得のためには、何よりも一度契約したお客様のライフステージの変化を確実に把握し、最適な提案を行うことが必要です。
フロービジネスの住宅販売では、引き渡しによって販売側の営業活動は終了していました。しかし、引き渡し後にお客様の暮らしは始まります。家族それぞれの生活の変化、家族構成そのものの変化も生じます。ライフステージは変わり続けるのです。この変化に寄り添い、信頼関係をしっかり築くことがリピートでの特命発注を受けます。リピーター対応は建て替えだけでなく、賃貸も含めた住み替えの斡旋も含めることで、ビジネスの領域も広がります。
建物の経年劣化や補修の管理だけでなく、お客様の変化を管理する……それが「ヒトの管理」です。継続的な顧客訪問のしくみづくりによりリピーターを増やすことで、住宅着工件数減少時代にあっても、勝ち残る企業となれるのです。
コロナ禍は必ずや収束しますが、その後は決してコロナ以前と同じではありません。むしろ、遠い将来に生じるだろうと考えられていたことが一足飛びにやってくると考えるべきです。その新しい時代を、施工店・販売店の皆様とともに乗り切っていくためにも、本部ではさまざまな施策を講じてまいります。ご期待ください。
2022年発表予定の新商品プラン
若年層向けの吹き抜けのある家や、1人住まい用のガレージ付の家などを、賃貸用、マイホーム用として商品化していく2022年の洋館家本店グループの主要施策
▲特許取得した銅イオンによる給排気換気システムの商品化と実験データ取得
▲賃貸用、マイホーム用での新商品発表
▲産学協同による空間デザインの取り組みの継続
▲建築医学との提携研究の継続
▲洋館家本店システム普及のための訪問・オンライン指導
▲訪問・オンラインによる会員の受注増指導
▲新規会員拡大・会員受注件数の拡大
▲有事の際の資材手当の体制強化
▲「モノの管理」から「ヒトの管理」へ
顧客から学ぶ
住宅販売での生涯顧客化
住宅販売をフロービジネスからストックビジネスに転換するためには、一度販売したお客様を“生涯顧客化”していかねばなりません。今号のTOP MESSAGEでは、それを「ヒトの管理が必要だ」と述べました。契約までに得られた顧客情報だけでなく、継続的な顧客接点の機会で得られる“変化し続ける”顧客情報を管理し、最適な提案営業活動をしていこうというものです。
顧客との関係を管理するこうした手法は、CRM(Customer Relationship Management)と呼ばれるもので、顧客ごとの情報を蓄積・管理・分析し、個々に合ったサービスを提供することで、広義では顧客満足度やブランドロイヤルティの向上を目指すマーケティング戦略や仕組みを言います。長期的な視点から顧客と良好な関係を築き上げ、「生涯顧客化」を図っていくことです。生涯顧客とは、言うまでもなく商品やサービスを自社から繰り返し購入してくれるお客様のことです。
CRMでは、顧客データの「収集」「分析」「活用」の3つを定期的に行っていく必要があります。収集する顧客データは、「定量データ」と「定性データ」に分けられます。定量データは、名前や性別、年齢、職業などの「属性情報」と、メールアドレス、住所、電話番号などの「連絡先情報」、そして「商品」やサービスの「購買履歴」です。
属性情報はもちろん、連絡先も時間の経過で変化します。「売り切り」の住宅販売では、この情報が更新されることがありませんでしたが、CRMを進めるためにはこの情報が更新されていることが前提となります。
また、定性データとは、一般にはお客様の声やクレーム、問い合わせの履歴などの情報です。定期的なアンケートなどでそれを収集している企業もあります。
定性データの収集手段はいろいろありますが、最も効果的なのはやはり定期訪問による対面収集です。クレームで訪問するのではなく、クレームを未然に防ぐための「お伺い」などは営業面でも効果的です。
集めた顧客データからニーズや購買行動を分析します。次に同じ属性や似たような行動パターンを取る顧客ごとに分類し、それに応じたマーケティング施策や営業活動を実施するわけです。住宅販売ビジネスでは、修繕やリフォームの時期、建替えや住み替えのパターンを想定し、仮説と検証を繰り返すことで、生涯顧客価値を最大化します。
住宅販売のストックビジネス化に、ぜひ取り組んでみてください。