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コロナ禍を乗り越え
新しい時代の住宅の担い手へ

洋館家本店グループ代表  福田 功

洋館家本店グループ代表
2020年11月のオンラインセミナーより
 2021年を迎えても、新型コロナウイルス感染症の収束はまだ明確には見えていません。
 今般の予想だにしなかった新型コロナウイルス感染症の影響によって世界的な経済の激変が生じ、ビジネスや生活スタイルが大きく変わってきています。私たちはこの変化に対応した商品とサービスによって、コロナ後の新しい時代に備えねばなりません。

With/Afterコロナを踏まえた展開

 昨年11月13日、本部ではオンラインセミナーを開催しました。コロナ禍に対応した試みでしたが、全国の多くの会員に視聴していただきました。

 オンラインは時間と場所を選ばないということで、これからの研修活動や営業活動にどんどん取り入れられていくと思います。一方で、従来からのフェイス・トゥ・フェイスの研修や営業も大切であることは言うまでもありません。オンラインと対面とを上手に組み合わせていくことが、これからのビジネスで重要になってくるのでしょう。

 コロナ禍は暮らしとビジネスに大きな変化をもたらしました。この変化は、コロナ禍収束後も、その多くは変化したままで定着するものと思われます。そしてそれは、建築や不動産の世界にも大きな影響を与えます。

With/Afterコロナを踏まえた展開  その観点から、本部ではWithコロナ・Afterコロナを踏まえた住宅の新商品を発表しました。そして、この商品を軸 に全国500棟建設のキャンペーンを展開していくことを、11月のオンラインセミナーを通じて会員の皆様にお知らせしました。

新しい課題「在宅ライフの満足度向上」

 コロナ禍での生活スタイルの変化の中でも「在宅」の状況や考え方の変化は特に大きなものがあります。自粛・巣ごもりやテレワークなどで長くなった「在宅」時間をいかに快適なものとするかが、私たち建築や不動産の事業者が取り組むべき課題としてクローズアップされるようになったのです。

 これまでは、家族それぞれの目的達成はアウトドアライフで営まれ、ストレス解消もそこで行われました。それが、インドアライフに求められるようになったのです。

 在宅することに家族それぞれが負担を感じず、家族が家に一緒にいることが楽しいと感じる住まいを提供することが 目標になります。そのためには、家の間取りはもちろん、ビジネススペースや学習スペース、家事スペース、個人のスペースと全員のスペースといったことの配慮も必要です。

 コロナ禍が私たちに新しい課題を与え、そしてそのことが私たちのビジネスチャンスを作り、企業としての社会貢献 の方向を示してくれたのだと言えます。

時代状況と購入・入居者の環境を考慮

時代状況と購入・入居者の環境を考慮  コロナ禍収束後の新しい時代を視野とした新商品が前提としているのは、まず、建築・不動産業界を取り巻く環境では、住宅着工件数の減少と空き家件数の増加です。また人口・世帯動向は少子高齢化と核家族化により、世帯人口はますます減っていきます。

 そのような中で、一般の生活者は、平均所得の減少傾向が続き、「生活が苦しい」と感じる人々が増えています。そして、コロナ禍を経た生活意識の変化。それら、私たちのビジネスを取り巻くさまざまな事象を検討・分析した上で、新商品は開発されています。

 新商品のカテゴリーは、若い世代でも購入できる価格帯のマイホーム、「借りるマイホーム」としての戸建賃貸、そしてシニア世代の住み替えをターゲットとした平屋住宅です。いずれも入居ターゲットに応じての広さ、間取り、デザインを追求し、性能面では省エネ基準はもちろん、ZEH仕様、耐震構造、システム化など、規格であっても注文住宅に劣らず、それ以上のものを提供したいと考えています。

次は「医学と科学を導入した建物」の展開

次は「医学と科学を導入した建物」の展開  今回発表した新商品は、インドアライフ重視を基本コンセプトとしています。そしてこの住宅商品シリーズの次は、「医学と科学を導入した建物」の展開です。

 これからの住まいはゼロエネルギー構造はもちろん必要ですが、新型コロナを含めたウイルス対策、PM2.5や花粉などの問題を解決していかねばなりません。さらに高齢者の増加に対応し、在宅時間が長くなることに付随して必要とされるさまざまなサービスを考慮しなければなりません。具体的には、訪問医療、食料や生活用品の宅配などですが、それらは、これまではその場所に出向いて受けていたサービスを、家に来てもらって受けるということです。そして、そのニーズはコロナ禍によって一気に加速されつつあります。

 このような、これまでとは全く違った暮らし方が始まり、定着していくことを考慮した時、暮らしの安心、安全については根本から見直さなければなりません。住宅を供給する側も発想を大きく変えねばならないわけです。

産学協同で「健康維持・向上ができる家」を商品化

産学協同で「健康維持・向上ができる家」を商品化  コロナ禍でリモートワークが普及するまで、大半のサラリーマンは、サラリーを得るために会社に行っていました。しかしいま多くのサラリーマンが「家でも仕事はできるではないか」と考えるようになっています。

 それと同じことを、健康という点でも置き換えてみましょう。スポーツジムに通うことによって健康になるのではなく、家にいることで健康になれる住宅を造る、病院に行って病気を治すのではなく、家にいることで病気を治す……発想の転換とは、そのように大胆なものでなければなりません。

 「医学と科学を導入した建物」の開発は、大学との産学協同によって商品化が進められています。現時点では、まだ詳細までは公表できませんが、一つは、空間デザインをすることで「集中力を増す部屋」(「勉強ができる子を創る部屋」)、「ストレスを減少させる部屋」、「健康志向を目指すリビング」などスポーツクラブやジムに通わなくとも、健康の維持・向上ができる家を造るというものです。

新商品開発の前提と新商品

新商品開発の前提と新商品

人が主役で住まいはそのサポートをする

 コロナ禍を経て、人々の健康志向はますます高まるはずです。また、住まいに対する考え方もさらに変わるはずです。「家を建てれば(買えば)一人前」という風潮の中で、自分の収入から割り出してやむを得ず遠い場所や狭い場所に住まいを持つ人が多かった時代は過ぎ去ろうとしています。

 本来、人は人生の時間軸によりその時々に重視する物事、目標が変わり、それに応じて住まいに対する目的も変わる はずです。独身の時、子育ての時、子育て終了以降の時仕事もリタイアした高齢化時代、それぞれのシーンで求められ る住まいは異なるはずです。一度買ったらずっと同じ家に住み続けなければならないということは不合理的です。

 人が主役で住まいはそのサポートをする……そんな本来の姿が実現する時代に向けての取り組みが、私たち住宅供給者にはこれから強く求められてくると私は考えます。

 いずれコロナ禍の混乱が鎮まった時には、新しい時代がやってきます。新しい時代の住宅の担い手となるべく、準備を進めて参りましょう。

コロナ禍を経て戸建て志向が高まる

コロナ禍を経て戸建て志向が高まる  コロナ禍での生活者の意識や行動がどのように変わったかを見るために、さまざまな調査が行われています。その中で、住宅に関する意識では「戸建て志向」が高まっていることが多くの調査で明らかになっています。住宅関連業界の企業調査でも、リクルート住まいカンパニーが公表した「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」の結果では、「ぜったい一戸建て」と「どちらかといえば一戸建て」が合わせて計63%、特に20~30代の若年層に戸建て志向が強く、30代は前回調査に比べ実に22ポイントもアップしています。

 大東建託の調査(「新型コロナウイルスによる住まいへの意識変化やテレワーク実施状況調査」)でも、「コロナをきっかけにもっと広い家に住みたいと思うようになった」が22.6%ですが、それを大きく上回る45.1%が「コロナをきっかけに戸建てが良いと思うようになった」と回答しています。

 長年私たちが語ってきた戸建賃貸のメリット、集合住宅のデメリットが、コロナ禍でより実感されたということができるでしょう。

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