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「相続対策=賃貸経営」ではない
正しい情報提供で戸建賃貸住宅を普及させよう
株式会社 洋館家本店グループ代表 福田 功
賃貸住宅の空室が増加する中でも、「アパートマンションのニーズはまだまだある」と言われています。それは、アパートマンションのニーズではなく、アパートマンション“経営”のニーズがまだあると解するべきでしょう。その背景には、相続税対策への関心の高まりがあります。では、それは戸建賃貸投資の追い風となるのでしょうか。
相続税の対象者が増加
すでに皆さんもご承知のように、平成27年度(2015年度)の相続税の申告から基礎控除が改定され、国税庁の統計データによれば、相続税の申告対象者は約2倍に増えました。相続税の対象となる人の割合が、4%から8%へと増加したのです。
これは全国平均であり、東京23区などで土地などを相続する人の場合、4人に1人は相続税申告の対象者となるとも言われています。
さらに昨年、民法の相続に関する部分が、約40年ぶりに改正されました。改正法は、今年7月1日から実施されています。改正の内容を改めておさらいすると、①配偶者居住権の新設、②遺産分割に関する見直し、③遺言制度に関する見直し、④遺留分制度に関する見直し、⑤相続の効力に関する見直し、⑥相続人以外の貢献を考慮するための方策……などですが、これらが週刊誌やネットサイトなどでさかんに取り上げられることで、多くの人が相続対策に関心を持つようになってきたわけです。
銀行や大手ハウスメーカーもこうした状況に目を付け、数年前から相続対策セミナーなどをさかんに開催してきましたが、参加者は年々増えているようです。これまでも資産家と呼ばれる人は、何らかの相続対策を行ってきたわけですが、相続税申告の対象が増えたことにより、今まで何の準備もしていなかった人たちが、にわかに情報集めに走っているという状況なのです。
相続対策と賃貸経営のウソ
今まで何の準備もしていなかった人たちがにわかに情報集めに走っていることに乗じて、自らの利益のためだけに自社のアパートマンションを売り付けたり、融資を勧めたりするための「相続対策セミナー」も少なくありません。その結果がさまざまなトラブルを生んでいます。
各地で相続セミナーが開かれていますが、そこでは「借金をすれば相続税が節税できる」という話がよく聞かれます。ですがそれは、大きな誤解であり、極論すれば「ウソ」だとも言えます。
黒木貞夫税理士と共著の『RA投資マニュアル』『RA投資の波にのれ』でも触れていますが、アパート経営などのための借入金が節税効果を上げることはありますが、すべてにそれが通用するわけではありません。借金があれば債務控除で財産が目減りし払うべき相続税が減るというのが、借入を勧める金融機関の論法です。
しかしこれは、とても乱暴な論理です。あえて乱暴に切り返すなら、1億円を借りて1億円の金の延べ棒を買ったとして、借金があるから相続税を払わなくていいかというとそうではありません。1億円の金の延べ棒という試算には税金がかかります。アパートだって同じです。
細かな数字は本を読んでいただければわかりますが(『RA投資マニュアル』P206~)、手持ちの現金でアパートを建てても、借入をしても節税効果という観点ではどちらも変わりませんし、借入が有利ということはありません。また、両方とも、節税効果は5年目をピークに目減りし、20年経てば効果ゼロとなってしまうのです。
60代の人が相続対策を目的にアパートを建てても、平均寿命の80歳を超える頃には節税効果はゼロとなっているのです。また築後10年以上を経たアパートが、老後の暮らしを支える収益物件になってくれるというのは、現状では考えにくいことです。
相続対策と戸建賃貸経営
私たちが戸建賃貸経営での相続時のメリットをお話しするときは、分筆のしやすさを伝えます。「アパートは兄弟でどう分けるのですか? 戸建なら分けるのが楽ですよ」と。借りて作れば得ですとは決して言いません。
競争社会から脱して、共存利益を求める社会をめざす私たちは、相続対策への関心の高まりに便乗し、自らの利益のみ求めるビジネスとは一線を画していきます。各会員の皆様と顧客や地域の資産家の方々に相続対策についても正しい情報提供を行っていく、それが企業としての社会的な責任であろうと思います。本部ではそのような視点に立ち、会員企業が主催する相続セミナーへの講師派遣やセミナー設営支援などを行っています(前号でも紹介)。
例えば、私が講師を務めたり、本部が講師派遣するセミナーでは、「借金をしてアパートを建てれば相続対策になる」という単純な考えは誤りであることをお伝えしています。そもそも集合タイプの賃貸住宅経営は、これからの時代は大変厳しいということは間違いのない事実なのです。
私たちが展開する戸建賃貸住宅は、現状でも需要が多く供給が少なく、人口減と少子化が進み、ライフスタイルの多様化が一層進むこれからの時代に、ますますニーズが高まるものです。また、狭小地でも建設でき、分筆がしやすいなど、相続対策でのメリットも大きいものです。
しかしそれでも、「戸建賃貸を建てれば必ず成功する」ということは申しません。戸建賃貸経営をやってみたいというお客様からお話があったとき、私たち本部はその地番を伺い、立地条件について調査を行います。戸建賃貸住宅を建設する場所のエリアの公共施設、交通施設、商業施設、教育施設、医療施設、老人施設などの状況などを調査したうえで、賃貸住宅としての物件価値を判断するわけです。
価値が低く投資の回収が難しいと判断すれば、本部としては戸建賃貸の建設はお勧めしません。何が何でも建てさせて自社が儲ければよい、という営業はしない……それが私たちグループの信念です。
ウソの情報提供で一過性の利益を求めても、ビジネスは成功しません。世の中の流れは確実に戸建賃貸住宅に向かっています。お客様に正しい情報提供を行い続け、私たちの戸建賃貸住宅を普及させていきましょう。
相続セミナーの設営方法(費用等)、
講師派遣依頼は本部または本誌編集部にお気軽にご相談ください
設営例「相続対策と戸建賃貸投資セミナー」
集客 案内チラシを作成し、見込み客への訪問・DMと地域へのポスティング
講師 税理士や相続コンサルタントなど専門家60分+主催者または本部社員30分
設営 会場の確保、投影機材手配、配布資料(商品パンフレット、アンケート含む)準備
※セミナー後のフォロー(営業活動)が大切。10名程度の小セミナーからスタートしましょう