ブレインインタビュー 01
マニュアルを守ることで
良品質住宅をつくり
顧客に喜ばれ、事業の将来を拓こう
建築技術コンサルタント
大根 弘行 氏
<プロフィール>
建築技術コンサルタント、施工管理アドバイザー。芝浦工業大学工学部建築学科在学中から2×4工法を研究し、卒業後、渡米。ハワイイーストデザイン事務所で米国住宅の施工管理、スーパーバイザーの教育、指導を受ける。帰国後、大成建設グループの2×4住宅部門に参加。1980年、大成ホームエンジニアリング社長。96年に退任し、その後は複数の業界企業の社長を歴任し、2002年からは建築技術コンサルタント・大根弘士として本格的に活動。現在まで7,000棟を超える物件の技術指導。
洋館家本店グループには、建築、不動産、税務や広報などさまざまな分野の専門家をブレインとして擁し、新しい住宅産業構築の取り組みを行っています。今回はそのお一人、現場施工管理のプロフェッショナルである大根弘行氏にお話を伺いました。
建築業界の問題点を良品質施工管理で解決できる
ーー数多くの現場をご覧になり、現状の住宅建築業界の大きな問題点はどこにあるとお考えですか?
大根 いわゆる工務店さんの仕事としては、契約を取ってからの作業は完成図面、完全仕様書、実行予算作成、事前発注、工程表作成が絶対条件でありますが、完成図面はそこそこ、完全仕様書もそこそこ、事前発注はしていない、とにかく契約を取って、それから走り出すという感じが多いですね。だから、建物ができあがってはじめて完成図面ができあがると言ってもいい状態です。工程表もアバウトですし、材料の注文も、事前発注しなくて仕事をやりながら取っていきますから、いくらかかったかが最後まで分からない。建物が仕上がって「これだけかかりました」と現場が言ってきても、「そんなに予算はないからこの金額でやってよ」と。そんなことが、決して稀なことではなく生じているのです。
こんな状態では、工務店の利益は向上せず、お客様に満足していただける仕事はできず、良品質住宅づくりを続けていくことはできません。
ーー問題の解決にはどこから手を付けるべきですか?
大根 まずは施工管理面でのきちんとした施工マニュアルを整備し、それをもとに作業する人達がしっかり守って仕事をすることです。さらに、それを実行させる現場監督を養成することにあります。
現場監督の良し悪しで品質もコストも時間も変わりますし、職人のモチベーションも変わります。例えば、監督が作業工程を確認しないで場当たりで資材発注を指示すれば、現場の作業工程とは無関係な資材が運び込まれます。職人はその日の仕事をする前に資材をどかすという余計な仕事が生じる。こういうことの積み重ねが、作業工程遅延やコストアップ、そして現場のモチベーションに影響を与えるのです。
洋館家さんのような規格住宅であれば、仕様書も完成図面もしっかりあるわけですし、予算もできています。工程表もしっかりできています。つまりマニュアル化がされているわけです。でも、それらのマニュアルが守られるかどうか、それは現場監督次第です。監督がしっかり現場がマニュアル通りかチェックし、工程通り現場が進んでいるかを確認できていれば、規格住宅は予定通り完成できます。
あるいは、しっかりしたマニュアルと、それを現場で職人自らチェックするしくみがあれば、良い「現場管理のしくみ
で仕事はできます。現場監督の養成以上に大切なことは、職人・業者がマニュアルを守ってクレームのない品質の良い住宅をつくり、そのことでお客様に喜んでもらおうという、良品質住宅の風土を、その会社や各現場でつくっていくことですね。
現場に出向き指導しマニュアル改定に反映
ーー大根さんが施工管理のマニュアルづくりに取り組むようになったキッカケは?
大根 私は大学で建築を専攻しましたが、そこで2×4工法の研究をしました。卒業後、研究結果を確認するために渡米し、その後再渡米して米国住宅の施工管理の仕事をしながらそのノウハウを学びました。帰国後は大成建設の2×4工法住宅『パルウッド』部門の立ち上げに参画し、その後は同社傘下の施工管理とアフターサービスの業務指導を主とする企業の社長を任されてきました。施工管理を指導する上では、マニュアルは不可欠です。
50歳を前にして身体を壊しまして、会社のトップから退きました。もう長くないなと(笑)、後身に託すようなつもりで、それまでのマニュアル類を体系化してまとめ直したわけです。これが大変好評で、現在もいろいろ改定しながら現場で使われ続けています。
その後、私自身の体調も回復したので、その後はコンサルタントとして多くの会社の指導をさせてもらっています。洋館家本店とのお付き合いも友人の会社を通じて始まりましたが、現在は本部からの依頼で洋館家商品を建てるためのマニュアルの整備や、会員施工店の指導も行っています。
洋館家さんは規格住宅ですから、図面が統一されているし、仕様通りやれば仕様通りの良品質住宅の建物ができなければなりません。それだけでなく、マニュアルに示した工程通りのスケジュールで完成し、予定した利益も得られるはずです。しかし、施工店によってはまだそのあたりがまちまちなようです。私はいま、現場に出向いてその原因の解明と改善策を指導し、本部のマニュアルに反映させる仕事をしています。
昔ながらの仕事の仕方ではやっていけない
ーー施工店によって本部とは異なったコストになっているという話はよく聞きます。
大根 現在の建築業界では、全国どこでも資材などは購入量にもよりますが価格はほぼ同一です。洋館家さんの場合はそれを本部一括で調達しますから安い。もちろん、個々についてはもっとコストダウンできるものもあります。施工店が独自に調達する資材については、相手先との交渉によって下げられるものもあります。私がそのサポートをすることもあります。
それでもなかなか統一できない、価格差が必ず生じるものもあります。職人の手間賃、基礎、給排水などです。このうち、基礎や給排水は地域内である程度標準化できます。ところが、職人の手間賃は発注する施工店と大工・職人さんとの関係でバラバラです。しかし私は、この部分も統一できると考えています。
大工・職人さんの中にはいまだにバブルのころのような金額を要求する人がいます。昔に比べて仕事が減っていますから、余計、1回の仕事での金額を多くもらいたいと考える人もいます。でも、実際の労働時間に対しての単価はどうか、そこから議論すべきです。昔ながらの仕事の仕方では、休んでいる時間、空いている時間が随分あり、実労時間が少なすぎます。それを改善し効率よく仕事をし、数をこなして収入を上げる……、そういう取り組みを、発注側と大工・職人さんとで作っていくことが大切です。そういったことを職人さんと膝詰めで話して進めていくことも私の仕事です。
契約先では、大工・職人さんにも、そして経営者の方にも、私はときに厳しいことも申し上げます。しかし、昔ながらのやり方ではもう建築業者はやっていけないのです。私は、必ず成果を上げてみせるという信念で指導させていただいています。そのためには、すべての人々が勇気をもって改善、改革に取り組まなければなりません。
※大根氏のコンサルティング、指導を希望する施工店は本部までお問い合わせください。
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大根氏が指導する施工管理でのマニュアル化、チェック項目
建築施工での9大管理
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