賃貸住宅の景況感調査「日管協短観」がリニューアル。調査期間や項目が見直され、賃貸住宅管理業界の現状をより把握できるようになりました。今回の賃貸住宅に係る13の調査の中で、注目は「平均居住期間」。実年数での回答方式が導入され、初めて実態に近い数値が公表されました。注目のインボイス制度や賃料、条件交渉なども取り上げて解説します。
調査には、会員の賃貸住宅管理会社504社が回答。「平均居住期間」はこれまで、実感値や通説で4年と言われてきましたが、実年数での回答により「4年1カ月」と判明、単身世帯は「3年3カ月」、ファミリー世帯で「5年1カ月」と、約2年の差がある事も分かりました。
また、居住期間を過去と比較すると長期化する傾向が見られます。これは、コロナ禍の経済的な影響で、入居者が引っ越し費用などの一時的な支出を避けたことや、企業が「望まない転勤」を廃止する転勤抑制策を行った結果などが背景にあると分析しています。
賃貸物件の成約賃料は、全国平均では「変化なし」が約5割となりました。部屋数ごとにみると、1R~1DKでは「減少した」の割合が高く、1LDK以上では「増加した」割合が高くなっています。
特に首都圏では、1R~1DKの「減少した」が42.2%と4割を越え、1LDK以上では「増加した」が3割以上と高くなりました。その要因として、単身や夫婦のみなどの少人数世帯の増加、コロナ禍による給与収入の減少や在宅勤務の定着などによって、広めで賃料が低い物件へのニーズが増加したと考えられています。
「入居希望者からの入居時の条件交渉」の調査でも、興味深い結果が出ました。全国平均で、増加比率が一番多かった項目が「礼金・フリーレント」の47.9%。次いで「賃料」39.2%、「設備設置・交換・改修」30.3%となりました。礼金・フリーレントは、管理戸数が大きくなるにつれて「増加」比率が高くなり、特に、管理戸数5,000戸以上では、「増加」が5割を超えています。
「フリーレント物件」は、3~4年前から徐々に増えており、注目度も上がっています。オーナー側にもメリットが見込める、空室対策の一つといえそうです。
2023年10月に法施行を控えるインボイス制度についての調査も実施されました。調査時点(2022年7月~8月)での制度理解は、全国で8割弱。「理解しているが、まだ何も対応していない」が5割で、制度理解度は高いが、具体的施策への落とし込みや社内体制構築に時間を要している時期だったと思われます。
社内準備としては「会議等を行い、対策案を検討している」が最も高く、5割以上となっています。なお、管理戸数の多い会社ほど、理解度が高く、対応も進んでいる傾向が見られました。
日管協総合研究所|第26回 日管協短観(2021年4月~2022年3月)
住み続けたくなる住宅設備3選
需要の増加が見込める
戸建設備をご紹介
凶悪犯罪の過熱報道で急を要する防犯対策など、社会情勢やライフスタイルの変化で、設備の需要も変化しています。長く居住してもらうためにも導入したい、“選ばれる”住宅設備をご紹介します。
急務の防犯対策にも! スマートロック
様々なシーンで導入が進むスマートロック。スマホ・ICカード・指紋や音声などの生体認証で操作できる電子錠です。ハンズフリーで解錠されるキーレス機能や、施錠・開錠記録(入退室記録)を確認できる機能など、様々な性能やタイプがあり、日々進化中。防犯対策として取り入れる戸建住宅も急増しているようです。
「後付け可能・工事不要」で取り付けできる製品も多く、賃貸住宅にも簡単に設置できるメリットがあります。
※SwitchBot
人気上昇! シューズインクローゼット
設備の中でも重要視する人が多い収納。中でも今注目なのが「シューズインクローゼット」。アットホームのファミリーに人気の設備ランキング調査(戸建て編)では、1位のウォークインクローゼットに次いで人気の室内設備となっています。
土足のまま荷物の収納、取り出しができるのがメリットで、ベビーカーの置き場所としても活躍するため、小さな子どもがいる家庭には特に需要の高い設備のようです。
※株式会社アール
洗濯関係は一カ所で。ランドリールーム
ランドリールームは、洗濯からアイロンまでの洗濯関係の一連の作業が、一カ所で完結する部屋やスペースです。近年人気が高まっている理由は、年間を通して洗濯物を室内干ししたいというニーズが増えているため。共働き家庭の増加や、花粉症やPM2.5など、外気がリスクを持つ時代になったことが背景にあると考えられます。
プランニングの際には家事動線や広さを考慮し、換気扇やファン、除湿器の活用などがポイントとなりそうです。