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住宅着工は減少し賃貸ニーズは高まる
新設住宅着工推移から考える
これからの住宅供給ビジネス

 

昨年の持家の減少は、建設コストの上昇が要因とし、貸家の増加は転勤需要が戻ったとする見方が多いようですが(4~5ページ)、果たしてそれだけと考えて良いでしょうか。統計推移を確認しつつ、これからの住宅供給ビジネスを考えてみます。

2040年の着工戸数は
49万戸にまで減少

人口減少がとどまることなく続く日本にあって、住宅市場の未来は多くの壁が立ちはだかることは容易に想像できます。野村総合研究所が2022年6月に発表した予測によれば、新設住宅着工戸数は2030年度には70万戸、2040年度には49万戸にまで減少すると厳しい数字が示されています。一方で、既存住宅流通量は増加し、2018年の16万戸から2030年には19万戸、2040年には20万戸と増加すると見込んでいます。
 野村総研のこの時の予測では、22、23年度について、「中長期的な動向に基づく着工戸数はそれぞれ84万戸、87万戸と見込まれ」として「ウクライナ侵攻や新型コロナの感染拡大等による供給制約が、昨年度(21年度)のウッドショックと同程度の影響を及ぼした場合には、それぞれ80万戸、79万戸まで減少する見込み」としていました。結果はほぼこの予測の範囲と見ることができます。

持家と賃貸の比率は
50年変わっていない

10年前、2012年の集計の総括を見ると、新設住宅着工戸数は882,797戸でした。前年比では5.8%増で3年連続増加。新設住宅着工床面積も78,413千㎡で前年比4.1%増と3年連続増加と好調。ただし、着工戸数について見ると、持家は311,589戸で同2.0%増にとどまっているのに対し、貸家は318,521戸で同11.4%増と大きく躍進しています。実数のうえでも、貸家はすでに持家を上回っているのです。ちなみに、分譲住宅は246,810戸で同5.2%増となっています。
 【図1】は、20年間の新設住宅着工戸数を利用関係別に分け、その推移をファンチャートにして見たものです。ファンチャートとは複数の系列の量的な変動を比較するためのグラフの一種ですが、ある時点の数値を基準値として、その後の変動を基準値に対する割合によって折れ線の形で表現します。ここでは、2002年のデータを基準値(=1.0)としています。
 ここからわかるように、持家と貸家は好不調が交互に繰り返され、時期的に優位が入れ替わる感があります。しかし、数値を見れば、基準値より数字がより大きく低下しているのは持家の方だとわかります。
 ところで、持家の率というものは、現在どのようになっているのか。「住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、持家住宅は50年前の1973年が59.2%、直近統計の2018年が61.2%です。その間にかすかな上下はあったものの、45年もの長い期間にわたり、実はほとんど変化していないのです(2ページ)。

持家と賃貸のメリット
どちらを選ぶか

持家と借家のメリット・デメリットについては、住む側=消費者サイドからは長年議論がされてきました。持家は何と言っても資産形成につながり、将来売却することもできます。反面、住宅ローン返済のために大きな負担が生じる。居住地をたやすく変えることができません。また、昨今特に相続時に親族間で多くのトラブルを生む種ともなりかねないといった点は、近年、多くの人が認識し始めています。
 一方、借家は資産形成には結びつかないものの、ライフスタイルの変化に応じてフレキシブルに住み替えできます。収入の増減があっても、即応しやすい。加えて、メンテナンスも基本的にはオーナーの責任に属し、住む側には固定資産税や不動産取得税などの税負担もないなど数々のメリットがあります……これらは、私たち洋館家本店グループが、戸建賃貸住宅を市場に供給する大きな理由しているところです。今後住まいを選ぶ人々が持家と借家のどちらのメリットを重要視するかですが、私ちは賃貸のメリットを重視する層が多いと考えているわけです。そしてさらにもう一つの判断材料が、統計数値から読み取れます。

 



若年層の持家は低下
賃貸が主流へ!?

半世紀近く、持家率は変わっていないものの、「厚生労働白書」(厚生労働省)による年齢階級別の「持家世帯比率」からは「30歳未満」「30~39歳」といった比較的若い年齢層や「40~49歳」、「50~59歳」といった働き盛りの年代で、めだって持家世帯比率が下がっていることがわかります。
 1983年当時、「30歳未満」の持家率は17.9%でしたが2018年は6.4%、「30~39歳」は53.3%から35.9%になっています。持家率が高い高齢者の人口は増えていますから「60歳以上」の持家率は80%となっていますが、60歳未満では確実に低下しています。
 年功序列による所得の増加や終身雇用が約束される時代は過ぎ、多くの人は住宅ローンに対し慎重にならざるを得なくなっています。少子化で家を継ぐ者がいない家庭は増え続けていますし、多くの人が人生最後の暮らしを施設で過ごしていることなどから、家という財産を持ったり残したりすることに価値を感じないという人はさらに増え続けると予想されます。こうした中、住宅供給ビジネスは持家から賃貸へと舵を切るべきと言えるのではないでしょうか。

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