特集

backnumber

ウッドショックの影響を最小限に
供給確保に全力

 コロナ禍で経済活動が大きく制約を受ける中、住宅・不動産業界、建築・土木業界では、木材価格の高騰という別局面の危機が訪れています。「ウッドショック」とも呼ばれるこの危機を、洋館家本部ではネットワークを駆使して乗り切っていきます。

 今号では、ウッドショックについての情報を整理してみました。

日本の木材の6割は輸入に頼る

 製品原材料の大半を輸入に頼る日本。木材も例外ではなく、その自給率は37.8%(2019年。林野庁「森林・林業白書」)で、実に6割以上を輸入に頼っています。高度経済成長時代の1960年代以降、旺盛な建築需要を賄うため、安価な輸入材を大量に輸入するようになりました。それにより、1960年頃に95%以上あった自給率は年々低下し、昭和末期のバブル経済期には30%を切りました。そして2000年にはついに20%を割り込み、国内林業の衰退も進むなど危機的な状況となりました。その後、この改善を求める声は建築業界からも高まり、林業再生のための植樹や国内産利用促進などが進められ、自給率は30%を超えています。

 しかし、6割を超える輸入依存の状況は、海外の木材需給の影響をダイレクトに受けることになります。今回のウッドショックが、まさにそれです。

 

輸入材価格上昇の下地はできていた

 日本の輸入木材は、主にアメリカ・カナダからの「米材」が最も多くて15%程度。また同程度の15%程度を占めるのがマレーシアやインドネシア、ベトナムなどのアジア諸国からの「南洋材」、次いでヨーロッパ各地から運ばれてくる「欧州材」が約8%を占めています。このほか、オーストラリア約6%、ロシア約3%など。

 日本は世界有数の木材輸入国ですが、近年、各国とも木材の輸出については関税強化や、現在輸出ではなく加工品輸出にするなどの付加価値化を進めています。さらに、中国が世界各国の木材を大量に輸入していることから、輸入材の価格上昇の下地はできていました。中国は、世界の広葉樹丸太輸入量の39%、世界の針葉樹製材輸入量の20%を占める巨大な木材輸入国(林野庁木材貿易対策室「中国における木材貿易の動向」)。ロシアが輸出木材に高い税金をかけたことで、中国が輸入経路を他国に求めるようになり、価格上昇の要因になっていました。

 

米中優先で日本の木材が不足

 そこに今回のコロナ禍が生じました。アメリカでは自宅待機要請に伴い自宅の改築・改修が増加しました。低金利住宅ローンにより住宅着工数も増え、木材需要が増加し、2020年7月以降、木材価格が急上昇。シカゴの先物市場では5月に2020年の4倍以上の価格を記録しました。EUにおいても、感染拡大の落ち着きと同時に需要が回復してきました。

 ここに、いち早く経済活動を再開させた中国の欧米向け貨物が急増、欧米でコンテナが滞留しアジア圏でコンテナ不足となり、それに伴い海上運賃が値上がり。さらに、東南アジアでは労働力不足による生産停滞、悪天候により、供給も不足するなど、価格を押し上げる要因が揃ってしまいました。

 コンテナ不足による陸路供給の優先と、市場規模が巨大な米中優先のために、自給率の高くない日本では木材が不足。それにより国産材木の奪い合いや不足に至り、今回の「ウッドショック」と呼ばれる木材価格高騰となったわけです。

木材価格の上昇は今後も続く!?

 木材価格の今後の動向については、楽観論、悲観論それぞれで様々に論じられています。

 コロナ禍が終息に向かい、アメリカの住宅需要が落ち着けば、ウッドショックも落ち着くという楽観論がある一方で、供給をすぐに増やせないということから、木材価格は上昇を続けるという悲観論も強くなっています。特に、1964年の木材輸入自由化以降、国内林業は補助金を利用して既定の量を伐り出す減産体制にあり、急に需要が増えても補助金なしで伐り出せば赤字になってしまうという構造的な問題があるということ。また、伐採しても製材後の木材乾燥が間に合わないので、供給は急には増えないというものです。

 その結果、住宅業界の着工遅れや、住宅に関係する設備機器や電気工事、内装工事などの業者にもダメージがあり、ウッドショックが長引けば国内経済に大打撃があるという予測があります。

 本部では価格上昇に対応し、当面の受注分については材料の確保を行いました。引き続き安定供給のために、関係先のネットワークを駆使して資材確保に努めます。また、価格面昇の影響を最小限とするための方策を様々に検討していることころです。今後も事態をについても、上注視し、会員の皆様に情報提供していきます。

 

木材高騰の緊急措置として
価格改定を行いました

 本部では木材確保に努めていますが、高騰する仕入れ価格をやむを得ず商品価格に転嫁することといたしました。
 規格住宅は成約時に価格が明確に決められており、「建ててみないと価格がわからない」は、あってはならないことです。現状では、日々、仕入れ価格が値上がりする状況ですが、規格住宅=洋館家本店商品へのお客様の信頼を損なわないためにも、成約時の提示価格で完成できるよう、定価を改定しました。

産地価格の上昇と運賃上昇で輸入材の高値が続く

木材価格・需給動向〈2021年6月末現在。(一財)日本木材総合情報センターによる〉 

 

1.国産材(北関東)

原木入荷は順調だが、原木価格の値上がりが続いている。納期未定の受注残も大量にある。製品の余剰在庫は皆無で小売用の自社在庫もない。製品価格の上昇と需要過多で値段を決めかねる状況である。とくに柱、間柱は異常な高値で取引されている。


2.米材(アメリカ・カナダ材)

原木の出材は順調だが、今後の原木供給減が懸念される。海上運賃はリーマンショック後の最高値を更新中。国内米材製材最大手は産地価格の上昇、海上運賃の急騰により3月から4ヵ月連続の値上げを表明した。


3.南洋材 

全マレーシアで6/1より2週間のロックダウン措置が発出され、半島マレーシアでは木材製品の輸出もストップされた模様。中国、台湾、韓国、ベトナム等からの引き合いが増え、価格は大幅に上昇している。


4.北洋材 

原木入荷減と中国からの引き合い再開で産地製品価格はさらに上昇傾向。国内挽き完成品も各社とも原板在庫が減り、末端ユーザーに供給できないメーカーも出てきている。


5.合板

合板用原木の国産材は不足感が強く価格も上昇。米材は同国内と中国向けの引き合いが非常に強く、高値張り付き状態。


6.構造用集成材

輸入コンテナ不足の問題は継続。輸入集成材の価格は米材価格高騰の影響を受け、管柱・平角とも今後、一気に価格は上昇していく見込み。


7.木材チップ

チップ原木の入荷は低調だが、製紙・バイオマス用とも引き合いは強い。


8.市売問屋 

国産材ではスギとヒノキKD材(人工乾燥材)の柱、間柱等の不足が顕著。米材等の外材入荷が滞る間は値上がりが続く予想。


9.小売

スギ柱角、間柱は品薄で価格も上昇。桁角、母屋角も品薄が続いている。ヒノキ土台角、柱角も品薄で入荷毎に値上がっている。

 

YCY News

top