施工店インタビュー 012

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糸田氏

熊本住宅復旧
洋館家住宅

熊本建設株式会社
代表取締役 糸田 健次 氏

前号特集で熊本地震の状況をお話しいただいた熊本建設・糸田健次社長に、同社の取り組みと社長の事業等のお考えを伺いました。

物件画像
▲ 熊本市内の同社の物件

熊本建設株式会社
地元の有力不動産会社・熊本地所を母体に、2012年(平成24年)に設立された建設会社。熊本管財、熊本不動産鑑定所、熊本賃貸保証のグループ会社を形成している。



本社/熊本県熊本市中央区黒髪1丁目4番1号
電話/096-327-9696
http://www.kumamoto-j.info/






  住まいを探す人は戸建を求めている

ーー建築会社設立のきっかけは?

糸田 母体の熊本地所は不動産会社ですから、例えばマンションを売買すれば、買った方のほとんどはリフォームをします。また賃貸では、入居者の入れ替え時にはクロスの張替えや水道パッキンの交換などの設備改善があります。これもリフォームの一種です。こうしたリフォームを専門に行う建設会社を持っていましたが、その後、グループから独立していました。しかし、やはり一体となった建設会社は必要だということで、改めてこの会社を設立しました。もちろん、本格的に新築を手がけようという考えもありました。



ーー洋館家との出会いは?

糸田 熊本建設を設立したころ、熊本地所が加盟しているエイブルの紹介で洋館家を知りました。エイブルの洋館家への参加は熊本では第一号ですから、付き合いも長い。その紹介ですから、信頼し期待もしました。
 不動産の店頭にいると、家を探しに来た人の大半は最初は一戸建てを希望します。ファミリーの場合、わざわざ、隣室の音が心配な集合住宅を選ぶ人はいない。でも、良い物件がなく、仕方なく集合住宅を借りるのです。戸建の借家はあっても古いし、平家で安普請。だから家賃も高く取れません。需要があるのに供給されていない。洋館家の商品は、そこに見事にはまると思いました。「あ、なるほど」と。なかなかよく考えてある。熊本弁で「そら、よかばい」と思いました。

  耐震性能で競合他社との差別化を

ーー現在までの実績と今後の計画は?

糸田 洋館家グループに加盟して3年。会社設立当初はリフォームが主体でしたが、徐々に新築の体制を整えていきました。職人を集めなくてはならないし、新築を請け負える会社としてしっかりした体制を整えたわけです。その上で、洋館家の商品をここ2年ぐらいで10数棟建てました。24種類の洋館家商品を注文住宅のメニューとしているので、賃貸と注文が半々ぐらいの実績。建売もモデルハウスとして建て、1年以内に新築として売却しました。
 3年を過ぎて、さあこれから本格的に、というところで先日の熊本地震。幸い、洋館家の建物は被害がなく、耐震性に優れている点、つまり価格は安いが品質が良いということが証明されました。地震災害は不幸なことでしたが、復興に向けての需要、これから家の建て替えラッシュが始まります。新幹線の開通で経済面では福岡への集中が進み、少子高齢化と人口減少の影響が出ていた中で、熊本の経済にとっては明るい話題です。そこに洋館家商品をどんどん建てていければ思っています。およそ2万戸の家が建て替えられるだろうと言われています。そのうちの1%でも200戸、1割なら2,000戸の受注があるということです。



ーー洋館家商品を展開する上での課題は?

糸田 商品はよくできていると思います。洋館家を選ぶ最大のポイントは、品質を保ちつつ低コストであることです。注文住宅で受注すると、当然、オプションという話になりますが、私は営業に「オプションをやるな」と言っています。もちろん洋館家のメニューにあればオプションはやりますが、規格をはずれるオプションはやらない。コストになるからです。
 また、競合の存在もあります。熊本でも、我々と同価格で建てられるという業者がいます。そことの商品の差を、どうやってお客様に伝えていくかです。今回の地震で証明された耐震性などは、他社との差別化の武器になるはずです。

糸田夫妻氏
社長の片腕である永井美智代専務(左)。
「熊本市民は大きな地震に慣れていないからとても驚きました。ガスや水道が止まるなど日常生活も大変でしたが、お客様の被害状況の確認や復旧を最優先にしました」と4月14日と16日の大地震時を振り返っています。

本社社屋

取材時(2016年6月)、本社社屋はまだ補修工事中。「4月の大きな地震でビルも被害が出ました。でも顧客の補修・復旧を優先したので、自社ビルは後回しになっています」(永井専務)。

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 高校教師、石油会社、画商……
 糸田社長の波乱万丈の人生  topics

ーー母体の熊本地所創業のきっかけは?

糸田 不動産を始める前は、子供の頃から絵が好きだったこともあり、熊本でフランチャイズの画商をしていました。絵画の商談の際、不動産売買の話がよく出ます。お客様は皆さん、土地や建物を所有したり売買したりする富裕層の方でしたから、それならと資格を取って不動産の仕事を始めたわけです。
 画商の前は、東京でサラリーマンをしていました。アラビア石油という優良会社で、中東に出張にも行きました。石油会社がとても良い時代で、給料も高く、千葉に家を建て、熊本から父母を呼び寄せました。ところが、両親が関東での暮らしになじめず、一緒に熊本に帰ることになったのです。
 私は八代郡の出身です。熊本高校を出て、家庭の事情で働きながら地元大学の二部に通いました。公認会計士を目指しましたが、卒業後は地元の高校教師になりました。でも、世界で働きたいという夢があり、アラビア石油の中途採用に応募したのです。ですが、前述のように途中で帰郷し、熊本で商売を始めたわけです。
 人からは「波乱万丈」の人生ですねと言われますが、確かに変わった経歴かもしれません。いろいろな仕事をし、いろいろな人に出会ったことが、私の財産になっています。


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  高品質低価格を追求すれば伸びる

--洋館家商品の今後の可能性をどうお考えですか?

糸田 高品質低価格を追求すれば伸びると思います。でも、コストの管理というのはとても難しい。洋館家さんの仕様を、地元の大工さんに見積もりさせると、だいたい倍の値段になります。彼らが想定する値段の半額で建てさせるわけですが、だからといって工賃も半額というわけにはいきません。プレカットで規格で、工期が半分になる。半分の時間でできるのだから、コストは下がるはずということの理解を得てもらわねばなりません。それでもなかなか大変なら、仕事の量でカバーしてもらう。量を出せるよう営業しなければなりません。では、それだけの需要はあるのか。私はあると思います。
 ある時、ファミリーのお客様が不動産の店頭にお見えになって、「熊本市内の便利なところで戸建の賃貸はないか」とおっしゃいました。しかし、なかなか良い物件はありません。「どうせなら建てませんか」と言ったところ、「土地は?」と聞かれました。手頃な土地をご紹介し、節税やさまざまなご相談にも乗って、新築の受注に至ったケースもあります。
 熊本では普通のサラリーマンなら、払う家賃は6~7万円というところです。10万円を超える家賃設定はなかなかできません。そして住宅ローンもその範囲で考えねばならないということです。熊本で1,000万円以上の家が買えるのは、公務員ぐらいでしょう。でも、洋館家の商品であれば、普通のサラリーマンでも持ち家が建てられるわけです。



  商品に女性の視点をもっと取り入れるべき

--洋館家本部への要望やご意見は?

糸田 熊本は「文化の町」という誇りが市民にあります。それは住まいなどにこだわりが強い人が多いということで、間取りなどについても、いろいろ考えを持っている人も少なくありません。そんな中で耳にしたのが「洋館家の建物は男が作ったプランだ」ということ。こういう意見には、我々は素直に耳を貸さねばなりませんね。
 家を建てるかどうか、どういう家にするか、その決定権者はやはり女性ですね。熊本の男は九州男児と言って強そうに見えますが、実際は女性が強い(笑)。その意味では洋館家商品も、間取りや家事動線、デザインなどで女性の意見、視点をもっともっと取り入れる必要がありますね。



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