施工店 販売店インタビュー 024

バックナンバーはこちら

時代の変化対応した
新しいビジネス常に追求

  株式会社大和ハウジング
  代表取締役社長  吉松 聰司 氏

兄の陳内建司社長(右)と弟の陳内健明専務(左)

 福岡県南部のうきは市内の旧・吉井町は、白壁蔵造りの街並みが伝統的建造物群保存地区に指定されている歴史ある町です。この町の古くからの主力産業である製材業からスタートし、時代変化とともに業態変革をすすめる大和ハウジング・吉松社長を訪問しました。

会社 株式会社大和ハウジング
 1947年(昭和22年)創業の総合建材店。木のクセを熟知していることから、用途や希望に合った特性の木材を提案した理想の「家づくり」を行うハウスビルダーでもある。また、自社施工だけでなく、グループの不動産部門と連携し地域の優良工務店の紹介も行っている。


本社/福岡県うきは市吉井町若宮40-3
電話/0943-75-3336
WEB/http://yamato.ac/







  規格住宅で建築ノウハウを得る

ーー洋館家との出会い、戸建賃貸への参入経緯から教えてください。

吉松 当社は私の祖父の代からの製材業が発祥です。このあたりは昔から製材業がさかんで私の家の親戚も製材業でしたし、多数の同業者がいました。うちは製材業としてはそれほど大きくはありませんでしたし、戦後、輸入材がどんどん入ってくるようになり、祖父は製材だけでは先行き難しいと考えたようです。そこで輸入建材も扱う木材の卸業に転換しました。その後、不動産業や建築・住宅リフォームなどに進出したわけです。現在も、大和ハウジングの事業の8割は木材や建材の卸業です。元々わが社のお客様に大きな建設会社は少なく、ほとんどが個人事業の工務店さんや大工さんでしたが、近年は新築もリフォームも大手ハウスメーカーや異業種からの参入で受注が減少していきました。そこで、わが社が元請けになって受注することによって、これまでお世話になってきた大工さんたちに木工事を請けて頂くことによって恩返しができるんじゃないかと考えるようになったのです。
 住宅リフォームを進めながら、これからは新築もやっていきたいと考えていましたが、特別なノウハウがあるわけではなく、なかなか前に進まずにいた数年前、不動産部門の勉強会で戸建賃貸経営と洋館家本店のことを知りました。不動産業の立場で話を聞きに行ったわけですが、規格住宅であれば当社で施工もできるなと思い加盟し、早速、自社物件から取り組み始めました。

ーーこのエリアは賃貸住宅の需要が大きいのですか。

吉松 以前、一時的にブームになり、大手ハウスメーカーの営業攻勢でアパートがずいぶん建った時がありますが、その後、静まりました。そしてまた、大きな工業団地が建設される予定ですから、賃貸の需要はあるでしょう。しかしそうは言っても、人口がどんどん増えるということは考えにくい。今現在は、2017年の九州北部豪雨の被災者が仮住まいするために賃貸入居者は多いですが、今後についてはアパートの建て過ぎには注意が必要です。戸建賃貸はまだまだ少ないので、当社はこの部分での伸びに期待しています。



  さまざまな建て方、貸し方

--営業方法はどのような方で行っていますか。

吉松 本社にリフォームや住宅設備を実際に見て触れて頂けるショールームを設置しています。ここで『リフォーム相談会』や『お客様感謝祭』などのイベントを開催しています。専従の営業マンがいるわけではありませんから、こうしたイベントを企画し、新聞折込やポスティングで地域のお客様を呼び込んでいます。自社を知ってもらうために、イベントは住宅関連だけでなく、ハロウィンやクリスマスなどのイベントや趣味のサークルやマルシェを開催しております。
 また、不動産部門とも連携しています。賃貸の借り換えをご検討のお客様が来店されて、なかなか良い物件が見つからないというので、現在の家賃はと伺うと6万円とのこと。「それならば建てたらどうですか」と、お勧めしております。建てると言っても資金は1,000万円ぐらいというお話。1,000万円に根拠があるわけでもないようでしたが、安い土地を探して、現在ご検討頂いているところです。

--自社物件の賃貸もビジネスになっていますか。

吉松 現在は満室です。モデルハウスとして『シェリー・メイゾン』を一棟建てました。その後に建売として売り出したけれど、買い手がすぐつかなかったので賃貸に出しました。このような賃貸物件は、その入居者がそのまま住み続けてくれるなら売ってもいいと思っています。洋館家さんの物件ではありませんが、以前、中古住宅をリフォームして貸したところ、入居者から売ってほしいと言われ売却したことがあります。古民家を再生・リフォームして外国の方に貸しているところもあります。住宅をただ貸したり売ったり、建てたりするだけでなく、これからはそういう工夫や組み合わせがあるビジネスが増えるかもしれませんね。


お客様感謝祭等で併催する「マルシェ」のイベントではファンが多数来場し、結果として自社を知り、リフォームや新築に関心を持ってくれることになるという。


▲ イベントチラシ


▲ 大和ハウジングの施工物件



 ホームセンター経営から 不動産賃貸へ topics

吉松 製材から木材卸に転換した当社ですが、一時期はホームセンターを経営したこともあります。1983年(昭和58年)ですから、このあたりでは早い方でした。
 その当時はとても流行って経営も順調だったと聞いています。けれども10数年前頃からホームセンターはどんどん大型化して商圏内に出店してきました。当社のような単独の資本ではなかなか難しい時代になってきました。そしてついにここから1~2分のところに大型店舗の進出が決まった時、ホームセンター事業からの撤退を決めました。太刀打ちできない大手を相手に潰れてしまうよりも、余力のあるうちにやめて新しい事業を考えようということです。
 ホームセンターの跡地をどうしようかと考えているときに、コンビニエンスストアと外食チェーンから、この土地を貸してくれと言われました。自分でフランチャイズ経営をするのではなく、不動産賃貸業をするということになりました。ホームセンターは別会社でしたが、不動産業に業態を変えて今も続いています。
 時代の変化に対応して新しい事業や商材を考えるということは、私の時代になっても変わりません。私が社長になった時にまず手掛けたのは太陽光発電による売電事業です。まさに時代にあったビジネスだったと思います。
 今は行政が力を入れはじめた空き家対策などにも、ビジネスとしてどうかかわっていくかを検討中です。


web限定記事
もっと読む




  新規事業もさまざまに検討

ーー太陽光・創エネの事業は進んでいますか。

吉松 太陽光発電の取り組みは、九州北部豪雨より数年前の水害があった後です。浸水でダメになった自社倉庫を壊して更地にして、そこに太陽光発電の設備を造りました。当時はまだ電気の買取り価格が高かったですからいけると思いました。太陽光発電ビジネスもこれからは厳しい。蓄電池が普及するはずだと取り扱いをしていますが、なかなか売れませんね。電気自動車を電池代わりにするということについても、自動車メーカーの説明を聞いたりして情報を集めています。


▲ 蓄電池

 完全バリアフリーで屋根に太陽光パネルを載せ、そして蓄電池も設置という家づくりの話も来ていますから、こういう案件をやりながら新しい時代の住まいづくりの実績を積み上げていきたいと思っています。
 新規事業はいろいろ研究しています。一時は水耕栽培なども考えましたが、農業はいかんせん経験もノウハウがありません。やはり木材や住宅、不動産といった今のビジネスに近いものが取りかかりやすいと思います。空き家対策は国策でもありますから、私もいろいろ勉強しているところです。




  人手不足対策でも規格化は必要

ーー現状の貴社の課題といったものがあれば教えてください。

吉松 消費税増税の駆け込み需要は、前回ほどでないにしろある程度あると考えています。その需要に対して当社の新築や住宅販売をもっともっとアピールしなければと考えています。不動産部門はまったくの別会社ですが、ここと一体となった営業は不可欠ですし、場合によっては住宅部門と統合しても良いかとも考えています。また、建築を受注した際の対応、体制の強化も必要です。
 当社に限ったことではありませんが、人手不足はこれからどんどん深刻化するでしょうね。製材業に限らず、製造業では人手不足を補うための外国人雇用が一般化しています。建設現場でも増えているようですね。当社の外注先でも、単純作業は外国人労働者に任せているところがあります。安い賃金で使っているのかと思うと、いろいろ話を聞いてみると寮の手配や生活できるようにするための諸費用で、全体のコストはそれほど下がらないと聞いています。
 2017年の豪雨の復旧はなかなか進んでいませんが、大工などの不足も問題になっています。手間賃が高騰したという話はまだあまり聞きませんが、これからは日本人であろうと外国人であろうと、人件費コストは増え続けます。また熟練者は減りますから大変ですね。規格住宅のような誰がやっても同じ仕事ができる建物、建て方がこれからますます求められると思います。



top