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  事例研究住宅の付加価値販売
 付加価値の高い住宅販売で
  住宅購入者に「ぜひ買いたい」と言わせる
  賃貸入居者に「ぜひ借りたい」と言わせる
 共存利益事業を進めよう


株式会社 洋館家本店グループ 統括代表 福田 功



 消費者満足の最大効用を達成し、消費者がぜひ買いたいと思う需要過多状態を作り上げるには、合理化や能率化・効率化も大切ですが、最も大切なのは「商品の付加価値」です。価格が高いか安いか、それだけで売れるかどうかが決まったのは、もう過去のこと。私たちは情報アンテナを張り巡らし、住宅販売における付加価値を追求し続けなければなりません。

 戸建賃貸の提案も付加価値追求で


 洋館家グループが提案している戸建賃貸住宅の提案における付加価値とは何か。基本は、オーナー=大家さんにとっての付加価値と消費者にとっての付加価値を両方同時に提示し、実現していかなければなりません。大家さんの付加価値だけじゃなくて、消費者の付加価値をさらに追求し、共存利益を求めていかなければなりません。
 現状の賃貸住宅業界は、入居者は「いいものを安く借りたい」、大家さんは「ボロであっても高く貸したい」、それだけを互いに求めている感があります。しかし、それでは、相反利益。どこまでいっても競争しかない。駆け引きしかないのです。
 私たちはそういった不毛な競争から脱却し、共存利益を求めていきたいと考えています。


 共存利益追求が付加価値を生む


 先日、私たち洋館家の施工店・販売店グループに名を連ねている茨城県鹿嶋市の大和ハウジング・飯島稔社長がテレビの取材を受けていました。飯島社長は住宅販売の付加価値を追求した結果、これからの日本に求められる高齢者の安心安全と社会参加をサポートする素晴らしい取り組みを作り上げました。
 その取り組みは地域社会に大変評価され、マスコミに取り上げられることとなったわけですが、同時に同社の住宅販売の伸長にも貢献しているのです。まさに付加価値により、住宅購入者と事業者の共存利益を実現したのです。
 全国にはこのように、共存利益を実現する付加価値創出に知恵を絞っている方がたくさんいます。こうした方々の取り組みを学びながら、住宅購入者や賃貸物件の施主様らに「ぜひ買いたい(建てたい)」と言わせる住宅販売、賃貸入居者に「ぜひ借りたい」と言わせる物件づくりを進めたいと考えています。

家を売るのではなく
豊かなセカンドライフを提供する

 社会の超高齢化が加速する中で、「高齢者が移住先で社会参加しながら安心安全に暮らせる、ケア付きコミュニティー(Continuing Care Retirement Community=CCRC)」が注目されています。茨城県鹿嶋市を中心に住宅の建築と販売を行う大和ハウジングは、自社の住宅販売の付加価値サービスを発展させ、民間事業者としてのCCRC活動を全国に先駆けて展開。地域の社会貢献を行うとともに、他社にない住宅の付加価値販売の手法として大いに注目を集めています。同社の飯島稔社長にお話を伺いました。

大和ハウジング株式会社
代表取締役社長 飯島 稔


大和ハウジング株式会社
1995年(平成7年)に飯島社長が設立。土地開発、住宅建築、賃貸物件管理だけでなく、居住後のアフターケアサービスを重点化した事業を展開している。
本社/茨城県鹿嶋市荒野1533-179
電話/0299-90-4888
http://www.daiwa-housing.jp/

 住宅購入者への生活サポート


ーー貴社が展開する「なごみの郷 鹿嶋」の取り組みは、マスコミでも大きな話題になっていますね。

飯島 今年1月にもTBSテレビで取り上げられ(「白熱ライブ ビビット」1月18日放映)、2月は問い合わせ対応で大変でした。
 もともとは当社で物件を購入していただいた方へのサービスとして、さまざまな生活サポートをすることが出発点でした。お客様のいろいろなご要望に応えていくうちに、サービスの内容も広範囲になってきましたし、充実してきました。地域の企業との連携も行い、行政も関心を持ってくれるようになりました。
 そこで、それらの集大成として、昨年6月に非営利の生活互助会である「なごみの郷 鹿嶋」を立ち上げたわけです。地元の医療施設や銀行その他多くの企業のご協力を得ていますが、運営の中心は当社であり、非営利ですから資金的には当社の持ち出しとなっています。しかしそれでも、こういう取り組みが当社の住宅販売の付加価値として高く評価されていますから、広告として考えれば効果絶大だと言うこともできます。

 セカンドライフに必要な人間関係づくり


ーーこうしたサービスに着眼したキッカケは?

飯島 22年前に住宅メーカー勤務から独立した私は、最初、千葉で開業しました。しかし鹿嶋エリアの方がビジネスになると考えて、こちらでの展開をはじめました。私は隣町の神栖の出身で、神栖も住宅産業にとっては良いマーケットだということは知っていました。しかし鹿嶋には神栖とは違う可能性を感じました。
 鹿嶋エリアは豊かな自然に恵まれ、別荘地としての開発も随分前からされていましたが、私は、別荘としてではなく、現役を退いた後のセカンドライフを過ごす場所を探している層にとって絶好の場所だと判断しました。
 15年前、思い切って首都圏全域に新聞広告を出しました。費用はかかりましたが大きな効果があり、多くの方が当社の物件を購入され、こちらに移住されてきました。移住された後の暮らしについてお客様の声を伺ってみると、一番多い声は、ご近所に知り合いがいなく、年配になってからの移住ですから新しい人間関係を作るのにご苦労されていることでした。それならと、会社で移住者の皆さんの食事会をはじめたのがサービスの最初です。数人でお弁当を食べて歓談するといった会でした。

 「田舎暮らし」の助け合いサポート


ーー売った住宅のアフターメンテナンスをする会社はふつうですが、家を買ってくれたお客様の、その後の暮らしに関心を寄せる住宅販売会社は少ないですね。

飯島 せっかく家を購入しても、暮らしにくければ出て行ってしまいます。また、セカンドライフを提案しているのに、年配者には不便で住みにくいと評判になれば、次は売れません。このエリアの大洋村(現在は鉾田市に合併)は40年以上前に別荘地が開発され、比較的低価格で大々的に売り出されました。けれども今は、ゴーストタウン化し問題となっています。暮らしていくための環境整備に配慮してこなかったことが原因です。インフラだけでなく、生活をサポートするものが何もできていなかったのです。こちらは別荘ではなく一年中暮らすための住宅を売るのですから、快適な暮らしを提供しなければなりません。
 もちろん、「田舎暮らし」をするためにこちらに移住するわけですから、皆さん多少の不便さは覚悟していらっしゃる。けれども、高齢者が生活する上での医療や日常生活のサポートなどが整っていなければ、住み続けることはできません。そこで食事会をキッカケに皆さんの声、困りごとや要望などを集め、社内でできることから進めていきました。同時に、移住者自身がボランティアで、相互の助け合いサポートをする形も追求してみました。それが現在の「なごみの郷」となったわけです。

 高齢者住宅の供給から処分まで


ーーCCRC活動が住宅販売の付加価値になっているわけですね。


▲ 洋館家「和」 シリーズ施工例

飯島 年配の移住者に安全で安心な暮らしを提供するだけでなく、社会参加のサポートをするしくみをセットにした暮らし方の提案が当社のビジネスです。「田舎暮らし」をPRする業者はたくさんいますし、当社にも競合相手はいます。けれども、多くは売るだけです。売るだけの競争なら、安い方がいいということになります。ですから、その後の暮らしのこともセットで提案できなければ、これからの住宅販売は成り立たないと私は考えます。
 当社が鹿嶋でセカンドライフを想定した住宅販売をしてすでに10数年を経ていますから、初期の移住者の方の中には相当な高齢者もいらっしゃいます。伴侶を亡くされたり、独り暮らしが困難になって施設やお子さんのところに移った方もいますし、そろそろとお考えの方もいます。そういう方々の家の売却も当社が担います。
 もちろん新しい移住者を迎えるための建物についても、高品質な住宅を提供することは言うまでもありません。セカンドライフにふさわしい、健康面や利便性を考慮した住宅を低価格で建築するため、洋館家本店の平家住宅「和(なごみ)」シリーズも積極的に採用しています。

 CCRCノウハウ提供も視野


ーー今後の展開はどのように考えておられますか。

飯島 「なごみの郷 鹿嶋」を独立した組織として独り立ちさせていくことも必要でしょう。現在でも、運営の主体は居住者の皆さんで、当社の社員はそのお手伝いをするという立場です。それでも、当社はこの事業に人や資金をつぎ込んできましたし、これからも当分、その状態は続くでしょう。
 当社としては、投資してきた分の先行利益は得たいところですが、CCRC活動はこれからの日本にとってとても大切なことです。ノウハウを広く地域社会に還元することも考えています。鹿嶋エリアの可能性は大きいと考えていますが、他の地方でも同様の取り組みをしたいという話があれば、当社が自ら進出するか、地元の企業と一緒にやるか、ノウハウの提供のみ行うかなどいろいろな選択肢を考えています。
 もっとも、それらは当社の若い社員たちが決めていくことです。私は鹿嶋でここまでの道をつくりましたから、ここをもっと充実させたい。私たちの業界は、これからはただ住宅を建てればいい、売ればいい、仲介していればいい、という時代ではないことは明らかですから。

茨城県鹿嶋エリア

鹿嶋市は東京から約85km。隣接の鉾田市と共に、鹿島灘や霞ケ浦など広大な海と湖のある自然豊かな地。多数のゴルフ場や温泉などがあり、またサッカースタジアムや大型ショッピングセンター、公共施設も充実している。東京駅から高速バスで80分、しかも1日82本も運行されている。

非営利の生活互助組織 「なごみの郷 鹿嶋」

 「なごみの郷 鹿嶋」は大和ハウジングが提唱して誕生したケア付きのコミュニティ。その特徴は、「生活サポーター」と呼ばれるボランティアや地域の医療機関や複数企業の協力による「助ける」「助けられる」体制により、移住者の安心安全をサポート。また、カルチャースクールやゴルフコンペ、旅行会などイベントを通じての「学ぶ」「つながる」場の提供を行っています。
 2016年末からはiPadによる「押すだけ操作」のSNSを導入し、サポーターの適性をデータ化。依頼者の求めに沿った最適サポーターをオンラインで紹介するとともに、毎日の安否確認も可能となっています。
 「なごみの郷 鹿嶋」の入会は入会金5,000円、月会費4,000円(初年度53,000円)だが、大和ハウジングでの住宅購入者はこれが無料となり、移住と同時にメンバーとなり、各種のサービスを受けることができます。

なごみの郷 鹿嶋 「生活サポーター」が実施するサポートメニュー

(2016年9月現在)

 「生活サポーター」の多くは元気な移住者。ボランティアとしての活動が、高齢者の社会参加ともなっています。サポートの報酬はボランティアが受けとります。なお、運送や旅客業務ではないので、買い物同行や病院同行の送迎の時間は費用に含みません。


買い物同行
到着後の1時間が1,000円、以降は500円/時間。自宅へお迎えや買い物のサポートなど。

病院同行
到着後の1時間が1,000円、以降は500円/時間。病院まで送迎し受付サポート。診療中待機します。

庭掃除
2名×2時間で3,000円~

電球交換
器具の確認と新品の購入。電球交換後はシェードも清掃。作業時間約1時間で500円~。プラス電球代。

「なごみの会」イベント

 「なごみの会」は大和ハウジングがお客様のために設立した会員組織。移住後に趣味やサークル、各種イベントを通じた友達づくりや情報交換を目的に活動しています。


イベント
観桜会(4月)、バーベキュー大会(6月)、納涼祭(8月)、小旅行(10月)、忘年会(12月)など

カルチャー教室・サークル
菜園教室、「ひまわり会」(独り暮らしの方たちの会)、ゴルフ、グランドゴルフ、卓球、カラオケ、釣、パソコン、ハイキング、麻雀、囲碁、クラフトバンド、ハーモニカなど


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