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【解説】
住宅の省エネルギー基準が14年ぶりに改正

 断熱性能をより細かにチェック


 住宅の省エネルギー基準は2015(平成27)年7月に14年ぶりに改正され、2017(平成29)年9月から施行されました。大きな改正点は、住宅の断熱性能をより細かくチェックするとともに、新たに暖冷房や換気、給湯、照明などといった設備機器のエネルギー消費効率も評価対象に加えたこと。2020(平成32)年以降は全ての住宅がクリアしなければならないので(義務化)、これからの住まい選びには、高い断熱性能や気密性能とともに、より高効率な設備機器の利用がポイントになってきます。

 なかなか進まない家庭用の省エネルギー対策


 1997(平成9)年12月開催のCOP3(京都市)のあと、国を挙げて省エネルギー対策が進められているわけですが、家庭用部門では必ずしも効果が上がっていません。省エネルギーがコスト削減につながる製造、運輸部門などと違い、世帯数の増加、利用する設備機器の増加、ライフスタイルの変化などによって、依然として対策の強化が必要な状況にあるのです。
 新しい省エネルギー基準はこのため、躯体の断熱・気密性能に加え、住宅で使う設備機器のエネルギー効率も基準化されました。これにより、省エネルギー化によるエネルギーコストの節約はもちろん、健康で快適な暮らしが送れ、さらに長持ちする住宅を提供していこうというわけです。
 国としてはそれにより、近未来には、消費分に見合うエネルギーをつくりエネルギー消費をゼロにする「ZEH」(=ゼッチ、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、さらに建築から解体までの総CO2排出量をマイナスにする「LCCM住宅」(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)を一般普及させていくロードマップを打ち出しています。

 全国の地域ごとに基準を定める


 今回の改正内容のあらましを見てみましょう。

  • 給湯や家電、暖房など、住宅で使用するエネルギー全般について基準値を設けた。このため、電気やガスなどエネルギーごとに異なっていたエネルギー単位を、一次エネルギーのエネルギー単位(J<ジュール>)に換算・統一化して、比較しやすいように改めた。
  • 「建物外皮*」における断熱(冬期の熱損失)、日射遮蔽性(夏期の熱取得)といった性能を、外皮総面積あたりで評価する方式へと厳格化した。
    *建物外皮とは、「屋根または天井・外壁・開口部・床または基礎」部分を言う。
  • 我が国は南北に長く気候が違うので、全国を8地域に細分化し、地域ごとの外皮基準と一次エネルギー消費基準を定めた。外皮については、住宅から逃げ出す熱の上限値を「UA(ユーエー)値」、住宅に入り込む日射熱の上限値を「ηA(イータエー)値」として定めた。

■外皮省エネ基準について

■「住宅の省エネルギー基準」における地域区分

 「強化」というより「より細かく算定」


 省エネルギー基準の評価にあたっては、「外皮基準」と「一次エネルギー消費量基準」にセットで適合することが求められます。基準への適合は、実際の住宅の設計仕様で算定された「設計一次エネルギー消費量」が、「基準仕様*」で算定した基準一次エネルギー消費量“以下”になることが基本となります。
 また、設備機器の一次エネルギー消費量については、「暖冷房設備」「換気設備」「照明設備」「家電調理等」のエネルギー消費量を合計して算出。「エネルギー利用効率化設備」(太陽光発電、コージェネレーション設備)による発電量は、これからエネルギー削減量として差し引きます。
 これらからわかるように、新しい省エネルギー基準は強化されたというより、よりきめ細かに算定する方式へと改められたわけです。
*基準仕様とは、2013(平成25)年基準に適合する外皮と、2012(平成24)年の標準的な設備を言います。

 設備も省エネルギー効果重視


 こうしたことから、設備機器を選ぶときは、より省エネルギー効果の高いものを選ぶことになるわけですが、具体的には「負荷の軽減」「設備の効率化」、そして「エネルギーの創出」という3つの視点から選ぶのが“クール(賢い)”と言えます。
 たとえば、「暖冷房設備」では、住宅の断熱・気密化、直射日光のコントロールに加え、通風や24時間熱交換機を採用して負荷を軽減。また、機器の能力は所定の効率が発揮できる能力のものを採用(*)するとともに、温水などを利用する場合は配管の断熱化も断熱化するといった設備の効率化を考えるようにします。
*過大な能力の機器は低い出力では所定の高効率が発揮できません。  また、「エネルギー利用効率化設備」である太陽光発電は、発電効率だけでなく、設置方位、角度にも留意して、エネルギー創出の最大化を目指すようにします。
 基準に適合した省エネルギー住宅は、「認定長期優良住宅」として、住宅ローン減税や登録免許税・固定資産税の軽減といった税制優遇措置、住宅ローン金利の優遇措置(フラット35S)が受けられます。

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