今後の戸建賃貸ビジネスを考えるためのDATA


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見学会  

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会がまとめた「賃貸住宅市場景況感調査〜日管協短観(2014年4月〜9月)」によると、同じ賃貸住宅に4年以上住んでいる人の割合が、前年同期比で増加しています。比率が高くなっているのはファミリー層や高齢者で、この層の長期居住はここ数年の傾向となっています。

  高齢者の居住は6年以上に

 調査は全国の同協会会員会社183社のからの回収データをもとに集計されたもので、前年同期との比較で、65歳以上の高齢者の同一賃貸住宅に「6年以上居住」が57.5%から62.5%と増えています。またファミリー層では「4〜6年居住」が57.8%から71.3%に増えています。ただし、「6年以上居住」は11.1%から8.6%へと微減となっています。

  ファミリー層も長期入居傾向に

 同調査によると、賃貸住宅に住むファミリーの動向では、4年以上同じ部屋を借りている家族の割合は、2009年では約60.4%だったのに、2013年通年の調査では76.0%に増えています。
 高齢化の進展で、長期入居者が増加することは当然想定できますが、賃貸住宅経営の側からは、ファミリー層の長期入居は歓迎すべき傾向です。「6年以上」長期入居となる物件の供給も必要でしょう。




グラフ1、2、3


見出し  

内閣府政府広報室が2015年11月30日に明らかにした「住生活に関する世論調査」によれば、住宅を“所有したい”と考える人たちが、10年ほど前(平成16年11月)に比べて4.1ポイント減り、平成27年調査(10月)では74.9%まで後退しています。

  非所有理由、“ローン敬遠”が減り“住み替え”増える

 “所有する必要はない”と考える人たちは、4.4ポイント増え、16.5%にまでなっています。また、“所有する必要はない”という回答にも変化が見られ、10年ほど前は28.6%あった「多額のローンを抱えたくないから」が20.9%へと7.7ポイントも減少。次いで多い19.8%あった「維持管理の煩わしさがないから」も17.8%へと2.0ポイント減少。一方で、「家族の状況の変化に合わせて自由に住み替えたいから」(18.1%→19.2%)、「固定資産税・相続税などの支払いが重いから」(5.6%→7.7%)といった理由が、少しずつ増えています。

グラフ4

  新築から中古、所有から賃貸への流れさらに進むか

 全体の7割以上が所有派である大きな実態は変わらないものの、住宅政策と市場ニーズの「量から質へ」の変化にともない、リフォームにも配慮した高品質住宅に普及などにより、新築から中古、所有から賃貸への流れは今後加速するものと見られています。
 賃貸物件の経営は、全国平均で見れば空室率が上昇傾向にあるので厳しさが増していますが、こうした調査統計から見れば市場構造はなお裾野が広がる傾向にあると言えるようです。




グラフ5

 賃貸ビジネスNEWS

  空き家を公営住宅に!? 官と民の棲み分けが課題

「国土交通省は、増え続ける空き家を準公営住宅として活用できるよう制度設計を行い、2017年の通常国会に関連法案の提出を目指す」という記事が1月16日付の日本経済新聞に掲載されました。

  空き家活用と財源不足対策

 記事の内容は「耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を“準公営住宅”に指定。公営住宅の入居基準以上の収入があっても家計が厳しい子育て世帯や公営住宅の不足で入居できない高齢者世帯に貸すことを認め、家賃の補助も検討する」というものです。
 目的は、増え続ける「空き家の活用」と「財政上の理由等により公営住宅を建設する余裕のない自治体の補完措置」。賃料については、公営住宅の賃料よりは高く設定されるものの、その差額について家賃補助等の措置を講じるなどし、同じ水準の民間物件よりも実質的に低く抑える方針とも書かれています。

  空き家の準公営転用には基準も

 平成25年度時点で空き家は820万戸とされています。もっとも、このすべてが準公営住宅となれるかというと、そうではないようです。準公営住宅に転用できるのは、新たに設けられる耐震性や省エネ性、遮音性などの基準を満たしたものということで、補修・改修の費用は補助の方向で検討するとのことです。

  自治体負担の補完を要望

 所得格差が広がる中で、賃料が安い公営住宅への入居希望者は増えています。公営住宅に入居できる基準を満たしながらも、民間の賃貸住宅に住んでいるという人は少なくありません。
 一方で、自治体の財源不足で公営住宅の建設は減少気味です。建設費はもちろん、補修等維持管理費用等の負担が、自治体にとっては重荷となっているわけです。全国市長会は昨年11月、国に対して「民間賃貸住宅を活用した公営住宅制度の補完策」を求める要望を取りまとめて提出しています。
 また、空室対策を検討している全国賃貸住宅経営者協会連合会も国交省の有識者会議で同様の提言を示しています。

  民業を圧迫しない賃貸の活用を

 しかし、空き家対策と賃貸住宅の空室対策は合致するかは慎重に考える必要があります。空き家が“準公営住宅”が増えることは、地域の賃料の下落を招きかねません。また、「賃料が安いのだから古い家で良い」は、時代に逆行します。
 例えば自治体による一括借り上げや空き家処分(売却や転用等)を促進する施策等、民業を圧迫せず、地域経済の活性化につながる施策を望みたいものです。

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