今後の戸建て賃貸ビジネスを考えるためのDATA

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総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」
5年ぶり「住まいの国勢調査」発表

 今回のデータは、総務省が昭和23年(1948年)から5年ごとに、住まいや土地の利用実態を調査し続けてきた、いわば「住まいの国勢調査」とも言える大規模調査です。2019年9月末に最新調査の結果が発表になりましたので、この記事では、RA(戸建貸家)に関連するデータをピックアップしてご紹介します。

借家は10年間で300万戸も増加

 少子高齢化が進んで人口が減っていることがよく報道されていますが、住宅数、世帯数は増え続けています。 これは、高度成長期から続く「都市部への移住」と「核家族化」が続いているためです。簡単に言えば、夫婦のみ、一人世帯が増えています。

 しかし、戸建てとマンションを含む、持ち家と借家の比率は、だいたい持ち家が6割程度、借家が4割程度で、景気動向や家族のあり方が変わっても、この40年ほど変わっていません。ただ、傾向としては、大都市・地方の中核都市、30代から50代では借家派が増えています。今後もその傾向は続きそうです。

◆住宅所有の関係別・住戸数の推移(単位:万戸)
住宅所有の関係別・住戸数の推移

賃貸は公営から民間の傾向が強い

 次に、借家の傾向を見ていくと、はっきりしているのは、「公営の借家(市営住宅のような自治体の物件)」や「UR・公社の借家」、「給与住宅(社宅)」の割合が下がり、民間の借家が増えていることです。第二次ベビーブームが起こった40年前と比べれば、社宅などは3分の1にまで割合が下がっています。

 逆に民間借家は実数でも倍近くまで増えました。その中で、一戸建ての民間借家は、全国で136万戸。民間借家の1530万戸うち、約1割弱です。地域別に見ると、地方に多いことがわかります。東京や神奈川、大阪と北海道が変わらない数になっています。

◆借家の内訳
借家の内訳

賃貸物件の空き家数が増加中

 RAオーナーにとって気になるのが、空き家でしょう。今回の調査で、全国の空き家の数は約849万戸。5年前より30万戸近く増えています。全住宅のうち14%近く、日本中で7戸に1戸は空き家ということになります。

 そして残念ながら、空き家の半分は賃貸用住宅の空き家です。調査ごとに徐々に増えています。これは、賃貸住宅が全体としては、借り手市場にあるということを指しています。適正な空き家率は5%程度と言われますが、借家だけで見た場合の空き家率は18%を超えますので、かなり危機的な状況です。選ばれる物件になる努力が必要でしょう。

◆賃貸用住宅の空き家数の推移(単位:万戸)
賃貸用住宅の空き家数の推移

賃貸の空き家はマンションがほとんど

 賃貸物件の空き家は、「共同住宅」(マンション)が9割近くを占めます。「一戸建て」は約5%で、「長屋建て」(タウンハウスやテラスハウスなど)の約7%より少なくなっています。選ばれる物件ということで言うと、最近の傾向としては、戸建ては狭く、マンションは広くなっています。戸建ての1戸あたりの延べ床面積は平均127平米で前回調査より2平米減っています。マンションは平均51平米でこちらは2平米増えています。家族の人数が減り、共稼ぎで家事負担を減らしたい家庭が増えるにつれ、RAに求められる面積もより減っていくでしょう。

◆賃貸住宅の空き家の形態別比率
賃貸住宅の空き家の形態別比率

引用データ:総務省統計局「平成30年(2018年)住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/

賃貸ビジネスNEWS

空き家ビジネスが花盛り
空き家活用に向けたビジネスが動き出す

 今や日本の7戸に1戸という数にまで増えた「空き家」。老朽化や災害による崩壊、放火による火災、景観の悪化など、さまざまな危険性が大きく取りあげられるようになってきました。同時に、空き家を対象としたビジネスがいろいろ生まれてきましたのでご紹介します。

自治体運営の空き家バンクから物件探し

全国版空き家・空き地バンク
「全国版空き家・空き地バンク」
https://www.akiya-athome.jp/

 崩壊してけが人が出たり、放火で周囲の家に延焼したりという危険がある空き家は、持ち主がはっきりしない場合、自治体が撤去する必要があります。その費用負担を避けたいこともあり、多くの自治体は空き家バンクをつくって空き家や空き地情報を提供しています。そんな自治体441の情報がまとめてチェックできるのが「全国版空き家・空き地バンク」。5000を超える物件が掲載され、古民家や農地付きなどの条件でも検索できます。

遠隔地の空き家を代わりに見廻り

空き家見廻り隊
「空き家見廻り隊」
https://akiya-now.com/?page_id=2917/

 空き家は放置しておくと劣化が進み、いたずらや放火の対象になりやすいもの。そこで遠くにある空き家をオーナーに代わって見廻るサービスが、「空き家見廻り隊」。 全国5万人以上の地域特派員が空き時間を利用して現場へ行ってくれます。東京23区の場合、基本プランは1回2500円で巡回し、異常がないかチェックして、写真撮影してくれます。オプションでポストチェック、掃除、草むしり、屋内のチェックや掃除などが可能です。

築150年の古民家を会員限定宿に改修

里美 古民家の宿「荒蒔邸」
里美 古民家の宿「荒蒔邸」
http://www.yuu-group.co.jp/kominka/

 空き家の一般的な活用方法は、売却、賃貸、事業活用の3つです。古く荒れた物件や、人が少なくなった地域も多いため、買い手も借り手もつかない場合が多くなっています。しかし近年は、買い取ってシェアハウスにしたり、古さを逆手にとって古民家の宿として営業する例も出てきています。「荒蒔邸」はNPO法人が築150年の古民家を改修し、会員に1日1組限定で貸し、田舎暮らしを満喫してもらう宿に生まれ変わっています。

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