今後の戸建て賃貸ビジネスを考えるためのDATA


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 国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査」

戸建貸家を借りた人たちの心の中


 今回のデータは、国土交通省が国の今後の住宅政策を企画するために、2001年から毎年行っている「住宅市場動向調査」です。2018年度中に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象として、注文住宅、分譲住宅、中古住宅、民間賃貸住宅、リフォーム住宅、それぞれに大規模調査を行っています。この記事では、「戸建て賃貸住宅」に住み替えた人にクローズアップして、その動向を解説します。

  「賃貸住宅」を選ぶ理由は「戸建てだから」

 住み替えをした戸建貸家物件を選んだ理由で一番多いのは、「一戸建てだから」で、家賃よりも高い数値となっています。マンションの場合は家賃と立地環境の数値が高いので、戸建貸家を選ぶ方は、「一戸建てであること」に高い価値を置いていると考えられます。マンションに住んでいる人と比べ、「昔から住んでいる地域」「親・子どもなどとの同居・近距離別居」を重視する回答の数値が高く、親の高齢化に伴って2世帯同居といった選択をしている人が多いようです。それは、「住宅の立地環境が良かったから」という数値が低いことでも伺えます。

【DATA1】民間賃貸住宅(戸建て)を選択した理由 (複数回答)



  戸建貸家はマンションからの住み替えが多い

 現在の戸建貸家に移る前はどんな住宅に住んでいたかという質問に対する答えは、圧倒的に民間賃貸住宅が多数となっています。持ち家からの住み替えも17.3%と大きな割合を占めます。ちなみに住み替え前は一戸建てだった人は30.8%、集合住宅(マンション)は51.9%で、マンションからの住み替えが多くなっています。
 住み替え前後の延べ床面積は、前が平均69.1平米、後が77.3平米で、広い家を求める傾向が見えます。
 場所は、同一市区町村内が57.7%、他からの移動が42.3%で、近い数字になっています。



【DATA2】住み替え前の住宅の種類(一戸建ての場合)



  戸建貸家の低年齢化が進む

 どんな人が戸建貸家を借りているのか、年齢で特徴的なのは、30歳未満の割合が25%にもなることです。平均年齢はマンション38.8歳、戸建て43.2歳でイメージ通りです。しかしこれまでの、結婚して最初の家はマンション、子どもが生まれて戸建て、という一般的なパターンのようなものが崩れているようです。それは、居住人数にも現れています。2人と3人で6割近くなります。大家族自体が減っていることが影響しているようです。
 ちなみに戸建貸家の貸主の職業で特徴的なのは、自営業が多いこと。26.9%でマンションの4倍近くなります。



【DATA3】世帯主の年齢(戸建て賃貸住宅の場合)




  賃貸住宅で困るのは「敷金・礼金」

 戸建貸家の借主は、どんなことに困り、不満を持っているのか。1位は敷金や礼金の負担です。6位の家賃・敷金の精算も合わせて、初期費用についての不満が高くなっています。同調査で、戸建て賃貸の場合、敷金/保証金ありの物件は61.5%、金額は家賃1カ月分が54.8%、2カ月分が22.6%という結果です。礼金は、ありが42.3%で、なしが50.0%と、礼金なしの物件のほうが多くなっています。これはここ数年の傾向です。
 この調査は大規模で戸建貸家についてもクロス集計されているので、ぜひ一度ご覧いただくことをお勧めします。



【DATA4】賃貸住宅に関して困った経験(複数回答)



引用データ:国土交通省「平成30年(2018年)度 住宅市場動向調査報告書 http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000135.html


賃貸ビジネスNEWS

賢い消費者の頭の中を知る!


住宅建築・リフォーム・不動産業界の必読本

今、消費者目線の社会派ブロガーとして知られる「ちきりん」さんが書いたリフォーム体験本が人気です。消費者だけでなく、業界関係者からも絶賛されています。それは、賢い消費者の頭の中を知ることで、業界にいると気付かない内容が詰まっているからです。そんな不動産業界で必読の本を3冊紹介します。

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 自宅マンションをリノベ(スケルトンリフォーム)した体験記、というテーマはよくあるものですが、「徹底的に考えて」リノベして、その経過を理論と感情で解説しているところが新しい一冊です。どういう視点でリノベ会社を探し、初回打合せをし、セレクトし、間取りをつくり、設備を選び、契約し、工事見学し…と、細かく赤裸々に紹介しています。リノベや注文住宅などは、モノを買ってお金を払う物品購入型ではなく、施主とリノベ会社が共同で行うプロジェクトだと言い、消費者の心構えも説いています。

「知りたいことが全部わかる!不動産の教科書」

池田浩一・著/ソーテック社/1,500円(税別)


「不動産取引に関する実務知識が自然に身につく!」として人気の一冊です。「宅建」本の簡単版とも言えます。不動産業界の仕組みから、不動産営業の基本、現地調査の基本、登記簿謄本の読み方、役所での調査の種類と方法、不動産査定の実際、資金計画、税金知識まで、ひとつひとつの内容は深くないものの、わかりやすく解説されています。特に現地調査は調査に必要なモノや、どんな点を見てくるのかなど、知識に留まらない実践的な内容になっています。オーナーや消費者も読んでおきたい本です。

「住まいの解剖図鑑」

増田奏・著/エクスナレッジ/1,800円(税別)


2009年出版と10年以上経つにもかかわらず、今でも人気の一冊です。その理由は、普遍的な「住まいとは」を解説しているから。たとえば玄関について、「入り口で靴を脱ぐのは、なぜ?」を解説しながら、玄関の意味と、玄関を構成するタタキや框(かまち)の形の理由など、根本的な内容を説いています。同様に、リビング・キッチン+ダイニング・階段といったスペースについて、導線・開口部・風通し・音といった住み心地について、イラストをふんだんに使いながら、柔らかい文章で説明してくれます。



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